"無視"への対処

 

以前、夫であるパートナーとこんな会話がありました。

 

私「(オードリーの)若林さんがパパになったって、第一子誕生だって!」

夫「西村賢太が死んだね」

 

私の言葉に対するリアクションがないまま、パートナーは別の話題を話してきました。

内容としても、好きな人(私はオードリーのことが好きで、パートナーも私がオードリーのことが好きであることを知っています。)に子どもが生まれて嬉しいという話に対して、私もパートナーも取り立てて好きなわけではない人が死んだという話をされて、とても戸惑いました。

なぜ私の話を"無視"するの?なぜ嬉しい話に対して悲しい話をするの?と悲しくなりました。

 

 

また、私の好きな漫画(高校生の物語)について会話しているときにこのようなことも……。

 

夫「今時の高校生の話は、おれたち世代じゃ全然分からないよね」

私「そうだねえ、でも今時の高校生の物語だけど、大人でもありうる物語だよね。

  大人でもありうることを大人の作者が高校を舞台に描いているよね」

夫「この情報化社会でさあ……」

私「???」

 

この、いきなりの情報化社会の話題への転換と、私の言葉にリアクションがないことを指摘したところ、「どうしてこうなっちゃうのかな!?」「噛み合わなくたっていいじゃん!」と言われてしまうこともありました。

 

 

こういった行動もありました。

 

私「(新体操の番組を見ながら)すごいねえ~~!」

夫(何も言わずにテレビのチャンネルを変える)

 

「チャンネル変えるね」の一言がなかったのでとても驚きました。私は新体操の番組を見たかったので、私の言葉に何のリアクションもなく、「チャンネル変えるね」の一言もなかったことがショックでもありました。

 

 

我が家では、「私の話に対するリアクションがないままパートナーが別の話をする」という事象が頻発していました。細かく分けると①私の話に対するリアクションがないこと、②パートナーがいきなり話題転換をすること、この2つの事象に私はずっと困っていました。

 

最近この事象に対して、改善が見られてきたので、改善に至るまでの対処などを書き残しておこうと思います。

 

 

まず、「私の話に対するリアクションがないままパートナーが別の話をする」というこの事象について、この記事では"無視"という表現をしていますが、人によっては"無視"という表現は強すぎる可能性があり、「それは"無視"ではないのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、私は、私の話に対するリアクションがないままパートナーがいきなり別の話をしてくると私の話を無視されたように感じるため、このような表現をしています。どうかご容赦ください。

 

また、私は会話に対して厳しく、会話が成立していないことがものすごく気になるタイプです。具体的に例えば何が気になるかというと、「はい」か「いいえ」で回答ができるクローズドクエスチョンに対して「はい」か「いいえ」で返さない会話とか、「うんうん、そうだよね」といった相槌がない会話、「話変わるけど」といった前置きなく別の話題に移行する会話、矛盾していて一貫性のない会話、相手の言葉を聞き取れなかった際に「ん?」と聞き返せば相手が言い直してくれると思ってる人の会話などが気になります。

会話が成立していないと感じる基準が恐らく人より厳しいです。

 

でも人間に一貫性を求めることは難しく、矛盾したことを話すのが人間で、私だって相手の話を無自覚に無視することもあります。「ん?」と聞き返してしまうときだってありますし、相槌をしないときだってあります。いちいちイラついてるわけでも傷ついているわけでもないですが、当然ながらリアクションがほしいときだってあります。

 

"無視"をされるとどのような気持ちになるのか

"無視"をされるとどのような気持ちになるかというと、まず、私の話を聞いてくれていない、と感じます。その裏にあるのは私の話を聞いてほしい、という欲望です。

また、私の話を聞いてくれていないと感じるとき、私は相手から大事にされていない、尊重されていないなあと感じ、蔑ろにされていると感じるときもあります。相手が私のことを大事に思っていて、尊重しようと思ってくれていたとしても、"無視"をされると"大事にされていない感じがする"のです。

 

仮に街中で一人泣いているとき誰からも声をかけてもらえなくても、「私は無視されている!」とは思いません。別に街中の人に対して「声をかけてほしい」と伝えてないですし、街中にいる人たちは私にとって大事な人ではないからです。

夫や友人など大事な人から"大事にされていない感じがする"と悲しい気持ちになります。また、私は大事な人の会話を聞きリアクションをしているのに、私は大事な人から"無視"をされると悲しくなります。大事な人から大事にされない(感じがする)というのは悲しいことです。

 

世の中には大事な人から"無視"をされても悲しくない人間がいるのでしょうが、それでも私は悲しいのです。

 

↓"無視"され続けると心がダメになります。

 

"無視"を指摘するのは怖い

"無視"に対する対処を書く前に、"無視"を指摘するのは怖いということも書いておきます。

 

私とパートナー間の場合、"無視"というのは大抵無自覚で、自分では気づかないうちに"無視"をしています。「無視してやろう!」と思っているのではなく、むしろ話に対するリアクションをしたいと思っているのに、無自覚に"無視"が出てしまいます。

それを録画も録音もないまま立証するのはとても難しいことです。言った/言わない、リアクションした/しないの議論に終始して、"無視"されて悲しかったという気持ちにフォーカスされないのではないか、「無視などしていない」とパートナーが言うのではないか、これまで喧嘩したときに言われたように「そんな些細なことで傷つくのか」と言われるのではないか、という恐怖がありました。

 

そういった恐怖がある中で対処を重ねてきました。

 

 

"無視"に対する対処

前提と対処に分けて記載します。

また、対処については効果と難易度も記載します。

 

効果が薄いというのは、対処の意図や本質が相手に伝わらなかったために効果が薄いケースが多いです。だから、どんなに効果が薄い対処を何度も何度も必死にやってもあまり意味はないのです。

 

これが結構苦しいのですが、一見 私が伝えた対処をパートナーが実行してくれているように見えるけれども、単に対処を実行してくれているだけで、その奥にある意図や本質を理解していないために、私の悲しみやつらさが加速するケースもありました。相手の行動が変わっても、相手が本質を理解してないのが分かる、そのために悲しみやつらさが減らずにむしろ増えてしまう、ということです。

 

そうすると「おれはあなたに言われた通りに行動しているのになぜ悲しむのか」と言われてしまいます。そういう場合、そもそも何のための対処なのか立ち返る必要があります。今回の場合は"無視"をされると大事にされていない感じがして悲しいから、その悲しみを減らすために対処をしているんだということを双方振り返る必要があります。

 

効果が薄い対処をしまくって改善が見られなかったところで「私の"無視"される悲しみが全然相手に伝わらなくて悲しい!」とさらに悲しみを重ねても仕方がないのです。

 

相手にものが伝わらないのは伝え方やそのアプローチが間違っているケースがあり、伝え方やアプローチを変えれば伝わるケースがたくさんあります。相手に伝わらない悲しみは分かるし、言葉を尽くしたのに伝わらないとき、これ以上どう伝えればいいんだと途方に暮れる気持ちも分かります。でも、とにかく相手に伝わらないと意味がないので、相手に届くまで色んな球を投げるしかないと私は思います。

 

また、この記事を書いていて思ったのはこれは単なる生存者バイアスがかかった文章だということです。たまたま以下の対処をしたらうまくいったというだけで、うまくいかない可能性だってあったはずなのに、うまくいったからと押しつけがましく文章を書くのはどうなのかなと思っています。でも、何か、誰かの参考になればという思いと、「あなたはこんなに頑張っていたんだよ」と過去の自分を肯定するために書いています。そもそも"無視"されて困ってる人なんて私以外にいないのかもしれない。誰のための文章かというと、結局は自分のために書いているに過ぎません。

 

前提の確認

  • "無視"された言葉は聞こえていたかを相手に確認する
    • 聞こえていなかった場合は、相手に聞こえるまで伝えます。
    • 聞こえていない場合は単に相手の耳が遠かったり、自分の声が小さく聞き取りづらかった可能性があります。また、意識が逸れていたり集中力が切れていたために話を聞けていなかったというケースもあると思います。
    • パートナーの場合、私の言葉は聞こえているにも関わらず、リアクションを取らずに別の話題をいきなり話すケースが多かったため、以降はそれに対する対処が中心となります。
  • リアクションを取るつもりで何を言おうか考えていたが、考えがまとまらない等で言葉が出なかったのではないかを確認する
    • これはリアクションを取る意思があり、具体的なリアクションを検討していたものの、「今考えているからちょっと待って」などの言葉がなかったために、”無視”されたと感じているのかどうかを確認する意味合いがあります。
    • 会話をしている際に沈黙が続くと、「何を言おうか考えているのかな?」と察することができるのですが、「私の話に対するリアクションがないままパートナーが別の話をする」というのは、考え中の沈黙とは別物です。
  • 相手は私の話を"無視"するつもりはないことを思い出す
    • これは私の心構えの問題なのですが、パートナーは別に「私の話を無視してやろう!」と思って"無視"しているわけではないと何度も何度も思い出していました。これを忘れてしまうと悲観的になりすぎてしまって「パートナーは私のことなんか大事じゃないんだ!」「私は話を聞いてもらえなくても当然の存在なんだ!」と大メンヘラ時代に突入してしまうので、相手は"無視"するつもりはなく、むしろリアクションをしたいと思っているはずだ、と何度も何度も思い出すようにしていました。
  • "どのようなときに"無視の事象が発生したかを確認する
    • テレビを見ながら、料理をしながら、掃除をしながら、など。
    • 対処のところで詳しく記載しますが、何かをしながらリアクションを取るという行動が難しいと感じる人が世の中には存在するということを念頭に置きます。
  • 「無視されてつらかったよね、悲しかったよね」と慰め寄り添ってほしいということを伝えておく
    • パートナーは共感や寄り添いがとても苦手で、改善が見られなくてもいいから、余裕があるときは寄り添ってほしいんだよということを伝えていました
    • でも寄り添ってくれるようになったのはつい最近で、それまでは 反論(?)への対処に書いたようなことばかり言われていました

 

対処

(その場で)口頭で伝える
  • 効果:★★★
  • 難易度:★★☆

「今リアクションなかったよ」と"無視"されたそのときに口頭で言うという対処です。

 

これは私にとっては少し難しいものでした。私は、泣いていると「泣くな」と言われたり、笑っていると「うるさい」と言われるという機能不全家庭で育ち、首を絞めることで痛みを最優先事項にし、そのときの感情を殺すという対処をして生きてきました。そのため、つらいときにその場でつらいと感じることがかなり難しいです。このような子ども時代に負ったトラウマが未だに残っており、つらいときにつらいと感じられず、後で落ち着いたころに「ああ、あのとき私はつらかったんだ」とやっと気づくという、感情が遅延してくる人間です。その場でつらいと感じ、つらいと言葉にするということは私にとってとても難しいことです。
でも、パートナーは私の両親とは違い、私のことを愛し、大事にしてくれる存在であるということを意識して、私が感情を伝えても大丈夫だと思い出しながら、今も頑張って、伝える訓練をしています。

 

また、"無視"されたときに必ずつらく悲しいというわけではなく、つらくないときや悲しくないときもあるので、そのときは負荷がかからずに「今リアクションなかったよ」と伝えることができます。

 

その場で口頭で伝えることにより、「ごめん、今リアクションなかったよね」とパートナーが言ってくれるようになり、かなりシンプルな対処で改善が見られました。

 

(あとで)口頭で伝える
  • 効果:★☆☆
  • 難易度:★☆☆

あとで口頭で言うという対処です。これは、つらいときにつらいと感じられない私にうってつけの対処です。後々思い返したときに、「あのときの会話は無視されてたな」と気づいたときに相手に言う対処です。

 

これは伝える難易度が下がるのと併せて効果も薄れます。あとで言うという対処は、自分も相手もどのような会話をしていたか忘れてしまうという弊害があります。みんながみんなそこまで細かく会話を覚えているわけではないですし、相手は無視したつもりがないからなおさら、「反応はしたじゃん」「あのときリアクションしてたよね?」といった返事が返ってきます。

 

また、私の場合、あとで言おうとするとあれもこれも……と言いたかったことが増えてしまいがちでヒートアップしてくる一方で、パートナーは会話を覚えていないしリアクションをしたつもりになっているのでなぜ私がそこまでヒートアップしているのか理解ができず、パートナーと私との間で温度差が生まれやすかったです。「無視してなんかない」「いいや無視した」という言い合いになり、過去を確認する方法は録音や録画などしていない限り分からないままで、事実確認に終始するのは不毛です。

 

(あとで)文面で伝える
  • 効果:★☆☆
  • 難易度:★☆☆

「(あとで)口頭で伝える」と似ていますが、ノートやLINE等文面で伝えることのメリットは、ヒートアップしづらいということです。でもこれも「(あとで)口頭で伝える」のと同様効果も薄いです。

 

会話を文面に書き起こす
  • 効果:★☆☆
  • 難易度:★★☆

会話をノートやLINE等に書き起こすという手法です。実際に行われた会話を録音したり、会話をしながらメモを取る必要があるため、これまでの対処と比べて難易度があがります。

 

メモを元にノートやLINEでこのときはこういう会話をしていて、あなたは私の言葉にリアクションを取らないまま別の話題にいきなり移行したんだよ、と伝えるものですが、ノートやLINEをパートナーが読む頃にはすでに会話の詳細を忘れているため、この対処もあまり効果は期待できないです。

 

反応されるまで言い続ける

  • 効果:★★★
  • 難易度:★★★

文字通りリアクションをしてもらえるまで言い続ける、リアクションを催促をするという対処です。

 

相手はリアクションをしていないことに無自覚なので、こちらから気づかせる必要があります。例えば「ご飯何食べるの?」という質問にリアクションがないときは、リアクションをされるまで「ご飯何食べるの?」と言い続けます。

 

私とパートナー間の場合、良いときは2回目で、大体は3回目くらいでパートナーがリアクションをしていなかったことに気づきます。最近は「ハッ!今無視してたよね、ごめんね、リアクションしてほしかったよね」と寄り添ってくれたあと、リアクションをしてくれています。

 

でも、催促というのは大変なエネルギーがいることです。疲れているときはできないときもあるでしょう。そのため難易度を★★★にしています。

 

催促したからといって必ずしも相手が"無視"を自覚してくれるかというとそうでもないのですが、「成功とは成功するまでやり続けることで、失敗とは成功するまでやり続けないことだ」と松下幸之助氏が言っていたように、相手からリアクションをされるまで言い続ければそれは"無視"にはならないのです(?)超疲れますけどね。

 

本当は催促をされた際に「ごめん気づいてなかった、言ってくれてありがとう」まで言ってほしいのですが、そこは求めすぎのような気がしてそこまでは求めていません。が、催促してもらえるのが当たり前だと思うなよ、ということはパートナーに言っています。

 

また、私もリアクションを取ってもらえて当たり前だという認識を捨てる必要があり、神経質にならないように気をつけています。催促し続けると相手の自尊心を傷つけるおそれがあるため、本当にリアクションをしてもらいたいものに限定して催促をしています。

 

ながらをやめる
  • 効果:★★★
  • 難易度:★★☆

何かをしながらの会話の場合、それを一時中断するという対処です。例えばテレビを見ているときは一時停止する、料理・掃除をしているときは手を止める等です。また、テレビを見ているときや料理・掃除をしているときは話しかけないようにし、終わってから話すことも私は意識しています。

 

パートナーはマルチタスクが苦手で、何事もシングルタスクの人間なので、ながらをやめるということは日々実践しています。

 

ここで注意をしたいのが、「自分が話しているとき」も注意が必要なことです。会話というのは双方が話すことによって成り立つものですが、パートナーの場合、話しているときは話していることに集中しているので、聞くことが疎かになるときがあります。聞くことができていても反応が疎かになるときもあります。

 

あくまで私の推測ですが、パートナーにとってテレビを見ながらの会話というのは、①テレビを見ながら、②自分の話をして、③相手の話を聞き、④リアクションを取る、というようにタスクが並列に走っている状態で、どれかひとつが疎かになっても仕方がない状態なのではないかと思います。

 

家でドラマを見るとなるとどうしても会話をしたくなります。一方で、映画館で映画を観る場合は会話はせず映画に集中し、映画が終わってから映画の話をします。これがパートナー向きのコミュニケーションです。
会話がしたい場合は他の手を止める。ながらをやめる。ながらのときはリアクションがなくなるときもあるだろうと心構えをしています。

 

先日ドライブに行ったのですが、「これから運転をするから話を"無視"しちゃうかもしれないから、そのときはごめんね」とパートナーが事前に言ってくれる出来事があり、とても嬉しく感じました。パートナーがこのように事前に伝えてくれるようにまでなった、そのこと自体とても嬉しかったです。いきなり"無視"が来るから衝撃を受けてしまうのであって、私もパートナーも、何かをしながらの会話のときに"無視"が出る可能性があると心構えをしておけば、実際に"無視"されてもダメージは最小限で済みます。

 

動画を見せる
  • 効果:★★★
  • 難易度:★★★

"無視"されたときの動画を相手に見せる対処です。自分が無自覚に"無視"をしていることを客観的に理解してもらいます。

 

今はスマホで何でも写真や動画に残せる時代です。別に"無視"された瞬間を記録してやろう!と思って動画を撮ったわけではないのですが、日常的に撮った動画の中でリアクションを取ってもらえなかった動画がいくつか見つかりました。

 

伝え方としては、LINEで"無視"の動画を3つほど共有しました。
「どうなったの?」という言葉に反応がなかった日、「なんでナンバーのチェックをしてたんですか?」という言葉に反応がなかった日、「寒いから今日は」という言葉に反応がなかった日、とそれぞれ説明付きで伝えました。

 

また、パートナーを責めたくて動画を見せるわけではなく、"無視"していることを自覚してもらうために動画を見せるのであって、そこで感情的にならないように抑えていました。「"無視"されて悲しかった!」等の感情は抑えるということです。「あなたは無視するつもりがないのは分かっている。常に無視しているわけじゃないことも分かっている。でも、この動画のように何かをしながら会話をしているときにリアクションがなくなる傾向がある」といった言葉も添えて伝えました。

 

パートナーは動画を見て「おれが反応してないね、反応してくれなくて無視されているようで、これは悲しいね」と言ってくれました。
これは本当にすごいことで、やっと伝わった!と思いました。これまで散々口頭や文面で"無視"していることを伝えてもあまり伝わらなかったのに、動画ではちゃんと伝わり、動画を見せる案を思いついた私って天才だ!と自分を褒めました。

 

ここで注意が必要なのが、"無視"された動画を見返す際には少なからず精神的にクるということです。今まで気づいていなかった"無視"に気づくきっかけにもなり、「私ってこんなにリアクションを取ってもらえてなかったんだ」と気づくのはキツいものです。

 

そして、相手に動画を見せることも少しの勇気が必要です。なぜかというと、その動画が楽しい旅行のときの動画であった場合、楽しい思い出を悲しみで少しだけ上書きすることになる可能性もあるからです。楽しくて思い出として残しておきたいからこそ動画に撮ったのに、それが悲しみの証拠になってしまう……。私はパートナーに動画を見せるときにそういう思いになりました。でも、結果的にパートナ―自身が反応していないと気づくきっかけに大いに貢献してくれたので、見せて良かったと思っています。

 

コミュニケーションの定石を教える

 

  • 効果:★★☆
  • 難易度:★★☆

コミュニケーションの定石を教える、というと「そんな定石は無い!」とか「お前の考えを社会の当然のルールとして押し付けるな!」とか言われそうでとても怖いのですが、会話には「うんうん、そうだよね」と相槌を打ったり、話題を変えるときには「話変わるけどさ」と前置きをするといった、ルールではないけれど、テンプレートがありますね。それを改めて言語化して伝えるという対処です。

 

この対処に至った経緯としては、パートナーは私の言葉が聞こえており、「リアクションはしたよ」と主張していることから、「相槌がへたくそなのでは?」というか「そもそも相槌をするという会話のテンプレをあまり知らないのでは?」と思ったことがきっかけでした。

 

次に、パートナーは私の言葉が聞こえており、心の中では何かリアクションを取ったのかもしれない。しかし、言葉としてリアクションを表現しないまま、いきなり別の話題に移行したことによって、私はリアクションを取ってもらえていないと感じているだけなのではないか?と思いました。

 

対処として「前置きなく話題がいきなり変わると、ついていけなくなるんだよ」といった話をしました。「あ、そうなんだ~」「全然別の話になるけどさ~」等、ワンクッションがあると受け入れやすいんだけど、それがないとびっくりする、ついていけなくなっちゃうときがあるんだよ、"無視"するつもりがないのは分かってるんだけど、蔑ろにされた気持ちになって悲しいんだよという話をしました。

 

もうひとつ対処として、これは私の伝え方が悪かったのですが、以下のような伝え方をしました(LINEで)。

「うんうん、それで?」「そうだよね」と相槌をしないで自分の言いたいことを言ってしまうのは、あなたが相槌が苦手だからなのかもしれないと思いました。もしかしてあなたは相槌が苦手なのではないですか?

その結果以下のような返信が来ました。

普段、相槌をしていると思います。自分の言いたいことだけ言ってません。ケンカをしているときに冷静に相槌をしないで自分の言いたいことを言うのはお互いにそうです。

相槌が苦手ではありません。あなたが苦手なのかなと思ってもいいです。

いわれのないこと、身に覚えのないことをいわれて、おかしいな変だなと思っても相槌はうってます。画面に集中していても相槌うってますよ。相槌をうってない、あなたがそう思うのはいいです。

メチャクチャ怒ってますね。相槌をしていないことに無自覚だから、いわれのないことを言われると抵抗感が出てくるのは最もだと思います。

このあと上述した動画を見せたところ、すんなり理解を示してくれました。

 

コミュニケーションの定石を実践して見せる
  • 効果:★★★
  • 難易度:★★☆

「うんうん、そうだよね」と相槌を打ってほしければ自分がまず相槌を打つこと。話題が変わるときは「話変わるんだけど」と前置きをしてほしければ自分がまず前置きをして話すこと、自分の話をしたいときは、相手の話を受け止めリアクションをしてから自分の話をすること、これを実践して見せるという対処です。

 

私のパートナーは、私の真似をすることが得意です。私が転職活動を始めたらパートナーも転職活動をするし、私がカウンセリングに行き始めたらパートナーもカウンセリングに行き始める。真似が得意なパートナーにとって、この対処は結構有用でした。

 

これまでも普段から相槌をしているつもりでしたし、話題が変わるときは「話変わるんだけど」と言っているつもりでしたが、より一層意識して会話するようにしました。その結果「最近"話変わるんだけど"と意識して言ってくれてるよね」とパートナーが気づいてくれ、パートナーも相槌を頻繁にしたり、「話変わるんだけど」と言ってくれたり、私の話にリアクションを取ってから自分の話したい話をするように変わってきました。私が実践して見せることによってパートナーが学習してくれてよかったなと思います。

 

やめた方が良いこと

「いつも」「全部」「全然」という言葉を言わない

 

「あなたはいつも私の話を無視する」「あなたは全然私の話を聞いてない」とか、そういう言葉を使うことによって「おれはいつも無視してるわけじゃない」「全然聞いてないわけじゃない、反応しているときだってあるだろう」とパートナーから反応されることがありました。まあ確かに常時"無視"しているわけではないのですが、悲しみが肥大化すると話を盛って表現してしまいがちです。でも、「いつも」「全部」「全然」という言葉を使って表現を盛ると、相手の自尊心を傷つけます。言葉を正しく使って事実を伝えることが大事です。

 

反論(?)への対処

「言いたいことを言うことの何が悪いの?」

 

言いたいことを言うのはいいけど、その前に私の話に対するリアクションをしてほしいということを伝えていました。会話をキャッチボールとして例えると、私がボールを投げて、それに対してパートナーもボールを投げているのだから、会話のキャッチボールになってるじゃん!というのは勘違いです。キャッチボールというのは相手からのボールをキャッチして、そのあとボールを投げるというのがキャッチボールであって、相手のボールをキャッチしないでそこらへんにゴロゴロ転がっている最中に、自分がボールを投げたいからって投げるのはそんなのキャッチボールではないと思います。

 

 

「思ったことを言うことの何が悪いの?」

他にも「思っちゃったんだから仕方がないだろ」「おれは言いたいことを言っただけ、それがそんなに悪いこと?」と言われてきました。

 

思うこととそれを言葉にして相手に言うことは別だと伝えました。

相手が傷つき悲しんでいるときに、思ったことを言葉にして言うことによって相手がさらに傷つく可能性がないか検討してほしいとも言いました。どのような会話でも、言葉のかけ方に注意が必要で、相手の言葉を理解しようとして言った言葉なのか、相手のことを気遣った言葉を選んでいるか考えていきたいんだよ、というような話もしました。

 

「おれはなんてダメな人間なんだ」

「無視されてつらい、と指摘されたことによっておれの人格が否定された、おれはなんてダメな人間なんだ」という意味です。

「無視されてつらい」と私が訴えているときに、「無視されてつらい、と指摘されたことによっておれの人格が否定された、おれはなんてダメな人間なんだ」とパートナーが凹むことが過去にありました。私としては人格を否定しているわけではないのですが、自尊心が傷つき否定されているように感じてしまうときもあるのでしょう。

 

だから『人格を否定しているわけではないんだよ、単に無視されると悲しいんだよ、リアクションを取ってほしいんだよ、今回の会話だと自分の話したい話をする前に「うんうん、そうだよね」と私の言葉に対する反応がほしかったんだよ』と具体的に伝えることが大事でした。

 

LINEを見返したところ、このようなメッセージを私が送っていることもありました。

あなたは無視されたと指摘されて悲しかったんですよね。無視するつもりはなかったんですよね。つらかったですよね。責められているように感じたんですよね。それはつらかったですよね。ごめんなさい。つらかったと思います

 

"無視"されたと指摘されて悲しい、というパートナーの気持ちが完全に理解できるわけじゃないですが、私からも寄り添う姿勢を見せるようにしました。正直、私が"無視"されて悲しい!と訴えているのに、パートナーは私に寄り添ってくれることは少なく、パートナーの精神が落ちてしまうことが多く、悲しんでいる私がパートナーのことを慰め寄り添わなければいけないところに私は不満を感じていて、抵抗感が出てくるのですが、それでも歯を食いしばって対応してきました。

 

話は逸れるんですが、相手を傷つけるようなことを言って、相手から「そのようなことを言われると私は悲しいです、傷つきました」と言われると、凹んでしまう人が、私は本当に苦手です。

傷ついているのは相手で、傷つくようなことを言ったのは自分なのに、それを指摘されると凹んでしまう。なんでだよ?と未だに不思議です。「相手を傷つけるようなことを言ってしまってごめんね」ではなく、「傷つけるようなことを言ってしまうおれはなんてダメな人間なんだ」と矢印が自分に向かって、全部「おれが」という主語になってしまう。その時点で傷ついた相手のことを視界から消している感じがして本当に苦手です。

私は人間なんてみんな他人同士なのだから意図せず傷つけることなんてザラにあると思っていて、「そのようなことを言われると私は悲しい、傷つきました」と言われたときに、「ああ、無自覚だった、気づいてなかった、気づかせてくれてありがとう、傷つけるようなことを言ってごめんね」とならずに大ショックを受けてしまうのはなんでなのだろうとずっと考えています。きっと、「そのようなことを言われると私は悲しいです、傷つきました」と言われて受け止めるだけのキャパシティが無いんだろうと思っています。

 

 

「おまえだって無視をするだろう」

「おまえだって無視をするだろう、おまえだって同じことをするくせに、自分が無視されたときにだけ傷つくのはおかしい」「おれは無視をされても傷つかない」「無視されたくらいで傷つくなんてネガティブすぎる」と言われてきました。

 

人間は何で傷つき悲しむかは人それぞれ違います。

「おまえだって無視をしているのだからお互い様だろう」というような主張は、おればっかりが傷つくおまえのことを慰めたり寄り添ったりしたくない、そんなの不平等だ、と思っているから出てくる言葉な気がしています。平等で対等な関係を築きたいのであれば、いちいちそんな些細なことで傷つかないでほしい、おれの基準に合わせてほしい、といった気持ちがあるのかもしれません。

でも、人間は何で傷つき悲しむかは人それぞれ違いますし、何で傷ついて何で傷つかないかという人それぞれの心の基準を相手に合わせることなんてできません。できるとするのならば、我慢だけです。「相手は同じことをされても傷つかないのだから、私は我慢しよう、我慢しなければ……」と、その場では我慢できたとしてもいつかダメになるときが来ると思います。

 

対処としては、人間は何で傷つき悲しむかは人それぞれ違うし、無視をされると私は悲しい気持ちになるんだよ、あなたは無視をされても悲しくないのでしょうが私は悲しいんだよ、ということをひたすらに伝えていました。

 

"無視"をされると蔑ろにされている気持ちになるんだということを言う。「蔑ろになんかしていない」と言われても、「蔑ろにしてない、大事にしてくれようとしているのはわかるけど、でも"無視"をされると蔑ろにされているように感じるときもあるんだよ」と懸命に伝えるしかないのかなと。

 

あなたと私は違う人間であると自他の境界線を引くのが大事なんじゃないかなと思います。

 

「察しろってこと?」

話を"無視"されたくなくて、"無視"されて悲しいと私から申告しているときですら「察しろってこと?」と言われることがありました。私は話を"無視"されたくないし、話をちゃんと聞いてほしいと伝えているのに、それでもパートナーにとっては分かりづらい部分があるから「察しろってこと?」というような言葉が出てくるような気がしています。

だからそのような言葉を今後言われないように、リアクションを取ってもらえるまで言い続けるとか、その場でリアクションを取っていないことを口頭で具体的に伝える等の対処をしています。とにかく全部言葉にしています。

 

「なんて言葉をかければいいか分からなかったから」

「何を言ってもイヤな気持ちにさせる気がして」とも言われていました。

これは前述した「リアクションを取るつもりで黙って考えていたが、考えがまとまらないなどで言葉が出なかったのではないかを確認する」と似ているとは思うのですが、なんとなく違う気もしています。

 

このような言葉を言われたときは、なんて言葉をかければいいか分からなかったからといって"無視"をしていいわけじゃないと思う、と伝えていました。なんて言葉をかければいいか分からなかったのなら「なんて言葉をかければいいか分からなかった」と言ってほしい、考え中なら「考え中」と言ってほしいと伝えていました。必要に応じて「ふーん」「そうなんだ」で話を流しても良いと思うとも伝えていました。

「何を言ってもイヤな気持ちにさせる気がして」は自尊心が傷ついていたり、私に対して恐怖を感じている状態なので、パートナーが私との生活を安全基地として過ごせるよう、相手の恐怖や傷つきを癒すケアなどをしていました。

 

「無視するつもりはなかった」

あなたの反応の催促に気づけなかった、そういうこともあったんだろう。気づけないときもあるし、気づかなきゃいけないわけでもない。それが無視だとは思いません。無視したくないし、無視するつもりもないんですから

あなたの世界では、無視したという事実になってしまっている

とパートナーから言われたことがありました。


私はあまり理解できないですが、パートナーは「そんなつもりじゃなかった」とよく言います。そんなつもりじゃなかったから許してほしい、なのか、そんなつもりじゃなかったから"無視"じゃない、なのか分からないけどとにかくそういう表現をします。


赤信号を守るつもりだったけど、結果的に信号無視をしてしまったのなら、それは信号無視でしかないのに、「守るつもりだったんだ」ということをとにかく主張してくる感じです。

 

パートナーによると、「そんなつもりじゃなかったのならおれは相手のことを許そう、という気持ちでいる」とのことで、これは、おれは"無視"するつもりはなかったんだから許す優しい心をおまえにも持ってほしいということなんでしょうか。このあたりが未だによく分からないです。

 

それはそうとして、私が泣いているときや傷ついているときに「そんなつもりじゃなかった」とパートナーから言われても「それなら許そう」とはなかなかなれないものです。「そんなつもりじゃなかったのなら、許そう」というのは自分自身で思い至るから許せるのであって、他人から言われてもムカつくだけです。


私はパートナーが"無視"するつもりなんてないことをわかっています。"無視"よりもむしろ話を聞きたい、リアクションをしたいという思いでいることも知っています。ただ、"無視"されて悲しいという気持ちのときに「そんなつもりじゃなかった」ということを免罪符のように言われるのがとてもつらいのです。

 

だから「無視されてつらかったね」って言ってもらうだけでいいのです。そして、私からも「無視するつもりじゃなかったのは分かっているよ」と可能であれば伝える方が吉です。そうすればパートナーが安心をしてくれて、私の悲しみに寄り添ってくれる可能性が上がるから。


終わりに

この記事は1万6000字もある内容なので、誰もここまで読んでいない気がします。読んでくれた殊勝な人がいるのならば、「なんで?そんなに私のことが好きなのか?読んでくれてありがとう」という気持ちです。

私の話に対するリアクションがないままパートナーに別の話をされると悲しいというのが文字数から分かった感じがします。過去の自分よ、よく頑張ったよね。

 

こうして振り返ってみると、"無視"だけでなく、「言いたいことを言うことの何が悪いの?」「おまえだって無視をするだろう」とパートナーから言われてしまうことも悲しみを加速させる要因でした。

最近は「無視されてつらかったよね」と寄り添ってくれることが増えましたし、パートナーも何かをしながらの会話ではなく、手を止めて会話に集中するよう行動してくれるようになり、この良い感じの関係性が継続することを祈るばかりです。