盛岡旅行記

 

 

「すみません、席倒してもいいですか?」と新幹線で前の席の人に聞かれるのが好きだ。

 

知らない人とほんの一瞬でも会話できること。知らない人なのに私の存在を認識してくれていること。私に一声かけようと思ってくれたその気持ち。そういうところが好きだ。

 

「すみません、席倒してもいいですか?」に対しては「どうぞ」なり「大丈夫です」と答えるし、断ったことは一度もないけれど、もし仮に「だめです」と答えたらどうなるんだろう?とは思う。

でも、席を倒されることよりも、私のことを一人の人間と認識して声をかけてくれた気持ちの方が嬉しいから、そんなことは想像だけ留めておく。

 

今日は、岩手の盛岡に行く、ひとりで。

 

 

なぜ盛岡か。

平野紗季子さんがやっているPodcast『味な副音声』で、くどうれいんさんのことを知った。 彼女は岩手県出身の作家さんで、俳句や短歌などをやっている方で、私と同い年。

 

 『味な副音声』で盛岡のご飯について話されていてほんの少し興味を持った。「焼肉屋は冷麺屋だから、盛岡で冷麺を出しているお店に行って、焼き肉を頼まなくても全く失礼じゃないです」とおっしゃっていて、その言葉にとても背中を押された。女の一人旅行、そんなにたくさんの量のご飯を食べられるわけではないし、知らないところで知らない人に注文するのがとっても緊張するタチなので、そういう、ローカルルールを教えてくれるのはありがたかった。

 

***

 

旅行というのは、日程、いつ行くか、を決めるのが一番難しいと私は思う。 日程が決まってしまえばあとは点と点を繋ぐようにして旅程を決められる。

旅行なんていつ行ってもいいし、別に私としても希望日もない。そうして日程だけが決まらないまま、行きたい場所や1日目、2日目に行くところをインターネットで調べあげ、完璧なルートができあがって、旅行に行ってないのに行った気になって「完全にこの街を理解した!(理解してない)」となり満足して行かないときも稀にある。

 

今回はパートナーが5日間一人旅に出たので、そのタイミングで私も一人旅に出ようと思った。5日間から選択すれば良いだけなので、日程を決めるハードルがとても低かった。次からもこのような旅行の日程を決めていきたいと思った。

 

***

 

盛岡に行くに際して、くどうれいんさんの『氷柱の声』という本を読んだ。

 

 

岩手で生きる人たちが東日本大震災に対してどう思っているのか知りたくて、この本を読んだ。福島ほどではないけれど大きな被害を受けた地域で「自分よりもっとつらい思いをした人が他にいる」とか「自分は家も家族も何も失ってなくて申し訳ない」と思いながら生きてきたこと、そして震災の被害を受けたことで「つらかったでしょう」などと物語として消費されることに静かに憤って生きてる人たちのこと知った。

 

この本を読むことによって、今回の盛岡旅行で見える景色が少し変わるかも、と思った。

ただ楽しいだけの旅行にしない。そこで生きている人たちの息遣いを知るというか、地面を踏む足に何か力をこめて生きてきたことがあるのかもしれない、と想像しながら旅行をする。少し姿勢が伸びる思いだった。

 

白龍 本店のじゃじゃ麺

 

盛岡駅に着いた。

 

兎にも角にもお昼ご飯を食べねばなるまい。駅弁も食べずに腹を空かせて盛岡に来たのだ。時間は有限であり、今回の旅行は昼に着いて夕方帰るという1泊2日の予定だから4食(1日目の昼・夜と、2日目の朝・昼)くらいしか食べられない。

 

まずホテルに荷物を預ける。でんでんむしという循環バスに乗る。向かうは『白龍 本店』。

 

なんだか揺れるな、運転が荒いのだろうか、と思いながらバスに乗り、停留所で降り、自分の足で道を踏みしめてみると きれいに舗装されているように見えて少しガタガタしていた。

東京のきれいすぎるほどツルツルした道に慣れてしまっているから、もう十分きれいな盛岡の道でさえなんだか揺れるなと感じてしまう自分に気づいた。

 

道中には、岩手県庁があり「3.11 あの日を語り継ぐ 大切な人に想いを寄せて」と書かれた垂れ幕を見た。やっぱりそうなんだ、と思った。東日本大震災がまだ身近にある街。

東京で暮らしていると、3月11日が近づくにつれその日のことを思い出すくらいで、普段はあまり思い出さない。でも、この県庁の前を通る人は、当たり前にこの垂れ幕を目にしているんだろう。

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白龍 本店に着き、30分くらい並んだ。みんなカップルとか夫婦とかで来ている。お店の方があと何回転で入れるか客の人数を数えながら注文を事前に取っている。

 

じゃじゃ麺

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混ぜる
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お酢、ラー油、にんにくが卓上に置かれているので、みんなそれらを使って思い思いに食べている。

 

じゃじゃ麺というのは完成された食べ物ではなくて、未完成の食べ物を自分なりにカスタムして、「ぼくがかんがえたさいきょうのじゃじゃ麺」を作り上げる、なんというかアトラクションみたいなものだと思った。

 

味噌だけだと飽きてくるからお酢を入れてみる。でもお酢の味一色になるとイヤだからちょびっと入れてみる。味が変わる。次はラー油もかけてみる。味が変わる。

麺は味噌やお酢やラー油と調和するけどなぜかきゅうりが取り残されている気がする。きゅうりの食べ方が難しかった。じゃじゃ麺は3度食べないとその良さが分からない食べ物なのだと何かで読んだが、おそらくその通りなんだろう。赤いやつ、なんだろう?と思って齧ってみたらでっかい紅生姜だった!おいしかった!

 

ちいたんたん
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じゃじゃ麺を一口残し、卓上に置かれた卵をおもむろに手に取り割り入れる。泥棒みたいに卵を取るのが少し緊張した。ちいたんたんをお願いするとちいたんたんが出てくる。スープにネギ。謎の食べ物。じゃじゃ麺の余韻を食べた。

 

お会計を済ませると雨が降っていた。

 

岩手銀行赤レンガ館

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傘を刺して少し歩くと岩手銀行赤レンガ館に着いた。

 

洋館が好きだ。

フォトウェディングも洋館でやった。

洋館、 近くには薔薇が咲いていることが多い。岩手銀行赤レンガ館の裏庭にも雨に濡れた薔薇が咲いていた。

 

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建築の知識があるわけでもなんでもないのだが、美しい建造物だな、と思う。几帳面な人が設計したのだろうというのが建物から伝わってくる。

ここから見たときにはどう見えるか、を計算して作られている感じがとても好き

 

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白沢せんべい店の南部せんべい

岩手銀行赤レンガ館を出ると結構な大雨になっていた。次なる目的地は白沢せんべい店。

 

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4月の弘前旅行のときにとってもおいしいせんべいを食べてから、「私ってせんべいが好きなのかもしれない!」と初めて気づき、今回の盛岡旅行では南武せんべいを買おうと決めていた。

 

駅ビルのお土産コーナーにある南部せんべいは保存料がふんだんに使われていると聞き、色々探したところ、この白沢せんべい店が良さそうだと思った。

 

ピーナッツ、ひまわり、かぼちゃを買った。帰宅後、うまいうまいと言いながらパートナーと一緒に食べた。この素朴な味わいが良い。ほんのり甘くて軽い。すぐ割れてしまうほど繊細なハネの部分まで食べ尽くした。

 

盛岡天満宮と盛岡八幡宮

とにもかくにも雨がすごい。

もうとっくにスニーカーは浸水してグチョグチョになっている。しかし盛岡天満宮と盛岡八幡宮に行きたい。

 

白沢せんべい店から盛岡天満宮は歩いて20分ほど、晴れの日ならなんてことないが雨の日だとキツい。ひたすら歩いた。脆弱な折りたたみ傘で風に煽られながら細い歩道を歩いた。私以外みんな車。

 

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盛岡天満宮が近づいてきたとき、↑の光景を目にして絶望した。写真では見えにくいかもしれないが、正面に階段があり、右方向に長く続いているのだった。大雨でもう何もかもがずぶ濡れなのにその上階段を登らないといけない…?死ぬかも……と思いつつ階段を登った。


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まだ階段


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着いた。静謐な佇まいが良い。

 

誰もいない中、お参りをする。御朱印はインターホンで人を呼び、対応してもらう。御朱印を渡されると共に「おみくじ付きなので、おみくじどうぞ」と促されおみくじを引く。おみくじ付きの御朱印ははじめて。中吉。

ここの御朱印はいくつもハンコを押してくれて御朱印側が自らスタンプラリー側に寄せていってるみたいで可笑しかった。

 

次は盛岡八幡宮

 

盛岡天満宮から盛岡八幡宮へは徒歩で15分かかる。盛岡天満宮の時点でもうだいぶ疲れているんだけど、ここまで来たら行くしかないのでひたすらに歩いた。

 

景色を見る余裕などあまり無いのだが、久しぶりに無人精米所を見てテンションがあがった。無人精米所では高校生くらいの男の子たちがお米を買っててなんだか和んだ。こんな大雨の中、自転車で来て、米を買うよう親に言われたのだろうか……。

 

着いた。雨すぎる


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神輿がいた。ずぶ濡れなのになんか縁起がよかった。子どもも老人もワッショイワッショイしていて元気だなと思った。私はもうくじけそうなのに。靴がもうビチョビチョで歩けなくなってきて、この辺から段々と、靴が浸水していることしか考えられなくなってきた。

 

こちらが御朱印


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チーズケーキのチロル 大通店のクリームチーズケーキ

 

雨がすごいので次の目的地は途中からバスに乗った。というのも15分歩いてバス停に行き、5分バスに乗る、みたいなそんな感じ。

雨で濡れたスマホが思うように操作できなくなってきて、乗換案内のアプリを見るのも一苦労だったから、適当にバスに乗り適当に降りた。

 

向かうはチーズケーキのチロルというお店。

『今日の人生3 いつもの場所で』で益田ミリさんが食べていたチーズケーキを食べたかった。

お持ち帰りでも良いのだけれど、せっかくならお店で食べたいと思い、ずぶ濡れの状態でお店に行った。申し訳ない……。

 

 

着いた。かわいい店構え

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「大変だったねえ」とお店の方に声をかけらてもらい、貸切状態の店内にすべり込む。注文のときには「コーヒーはアイスかホット、ホットのほうがいいかな?」と優しく話しかけてくださる、このずぶ濡れの人間になんとありがたいことか……。


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チーズケーキのうつわが丸くて白くてかわいい。チーズケーキをスプーンで食べるのも良い。コーヒーは柔らかくてまるくて深くて甘い味だった。

 

木造の店内、革張りの椅子、ランタンが連なったような美しい照明、かわいい置き物、果物の絵。

 

色んなものが置かれている店内なのに程よい距離感で私を見守ってくれるような温もりのあるお店で、大雨で冷えた身体がほっとするのが分かった。

 

「おいしかったです」と伝えて店を出ると、外はまだ大雨だった。

 

フェザン/イオンタウン 盛岡駅

夜ごはんはまだ早いかと思い、20分歩いて駅ビルのフェザンに向かいお土産を見る。奥州ポテトやタルトタタンのアップルパイを買う。

 

同じ階の三陸海産暖簾 山口屋では"アレ"が5000円くらいの値段で売っていた。高い……。エスカレーターで1階のお魚屋さんに行き"アレ"を探す。しかし"アレ"は無い!

私が探しているもの、それは、"瓶ウニ"!!!

 

 

この瓶ウニがどうしても食べたかった〜〜〜山口屋で買えばいいじゃないかと思うかもしれないけど〜〜〜私は複数のお店に売っているのを見比べて、それで選び取りたかった〜〜〜(そしてあの量で5000円というのに躊躇してしまったというのも正直ある〜〜〜)

 

大雨の中10分歩いてイオンタウン盛岡駅前店に行く。しかし瓶ウニはなかった。

 

ただ、私は旅行先のスーパーに行くのが大好きなので、色々な物をジロジロ見た。

 

有名な福田パン

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南部せんべいがおせんべいコーナーに何種類も売っていたり、岩手牛乳という見たことのない牛乳が売っていたり、小学校の体操着まで売っていた。「在庫処分!!現品限り」と書いてあり、体操着が在庫処分されることってあるんだ……と思った。ていうか小学校の体操着が売られているイオンって初めて見た。24時間テレビのTシャツがレジ横のサービスカウンターで売られてるみたいな感覚なのかな。よくわからん。

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盛楼閣の盛岡冷麺

さて夜ごはんは盛岡冷麺。 盛楼閣は駅前にある人気店なので40分ほど並んだ。お店が2階にあるので階段付近で待っていたところ、自分が立っていたところに軽く水たまりができていた。傘やスニーカーやジーパンから落ちた水たまり。満身創痍。

 

盛岡冷麺来た。

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初めて盛岡冷麺を食べた。ぷるぷるで透き通った美しい麺、水分をみちみちに含んだチューブをもぎゅもぎゅ食べているような気持ちになる。うるおい。指先にまで澄んだ水が行き渡る感覚になる。

 

イカの甘味、キムチの辛み、きゅうりの酸味、肉を歯で噛むとじわっとスープが出てくること、ゴマがかけられたゆで卵で口がまったりすること。

 

15分ほどで完食した。自分では気づいていなかったけれど、お腹が空いていたみたいだった。

冷麺なので当然冷たく、大雨で冷えた身体がさらに冷え込んでくる。しかしイヤな冷え込みではなくて涼しげな空気をまとった冷えはなんとも気持ちよかった。

 

冬になるとスイカではなく梨が登場するのだとくどうれいんさんの本『桃を煮るひと』に書いてあった。梨バージョンの盛岡冷麺も食べてみたい。

 

お会計のときに明るいおばちゃんの店員さんと会話をした。

 

『また(待っているお客さんの数が)増えてる!』
「お疲れ様ですほんとに」
『案内してもしても増えてるのよ』
「雨だからですかね」
『避難した方がいいものね、にしてもよ!(笑)』

こうやってカジュアルに話しかけてくれるのがとても嬉しい。観光地だからと安易に消費されて心が荒んでいるような、 (観光客にうわべばかり消費されてきたからか)うわべだけでビジネスをやっているような現地の人をたまに見ることがあるけれど、盛岡の人はみんな生き生きしているように見える。本当は内心うんざりしているのかもしれない。本当のところは私にはわからない。

 

でも、ひと目見て観光客だと分かるような私に気さくに話しかけてくれるのがとてもありがたかった。人間として扱ってもらえるのがとても嬉しい。旅行に行くとき、私は誰かのことを人間として見なかったときが無かったわけじゃない。どんなに細心の注意を払っても、視界に入らなかったこと、意図せず無視してしまったこと、そういう扱いをしてしまったことが私はあると思う。そういう一人ひとりの対応の蓄積が生身の人間の心を削っていく。自戒。

 

ホテルに戻った。

 

部屋に入り、いの一番にビチョビチョの靴下や靴を脱ぐ。ユニットバスだが浴槽にお湯を張る。その間に備え付けのテレビの案内を見る。テレビ岩手、岩手朝日テレビ岩手放送岩手めんこいテレビ……。地方のテレビ局を確認してローカル番組を見るのが大好き。

 

手荷物を広げてみた。お土産が入った紙袋が雨で溶けていた。紙袋が溶けるほどのものすごい雨だった。

 

お風呂に入る。身体がゆるむ。パートナーにLINEをする。瓶ウニの情報を探す。お風呂から出て引き出しに入っていた岩手情報が詰まった冊子をくまなく読む。街の構造を改めて把握する。2日目の予定を再確認して、寝る。

 

 

福田パン 長田町本店のパン

二日目、小雨は降っていたが雨は止むという予報だったので傘を持たずに出かけた。

 

盛岡で一番来たかった場所、福田パン

NHKの『グレーテルのかまど』で紹介されていて、絶対に絶対に行きたいと思っていたところ。

 

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学校の校舎みたい。かわいい


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夢みたいなメニュー表!胸が踊る、興奮で息がつまる。もうこのメニュー表を眺めているだけで楽しい。

 

悩んで結局以下の3つを頼んだ。

  • あん+バター
  • 田野畑山地酪農牛乳クリームサンド+バナナ
  • ポテトサラダ

 

店先であんバターパンを立ち食いした。

店の外にはベンチがあったのだが、老夫婦がパンを食べ終わったあとも長々と話しているので座れず、やむを得ず立ち食い。しかし朝早起きして外でパンを食べるのは気持ちよかった。昨日の疲れも若干残っているものの、あんバターの甘さが脳に効く。結構大きめのパンなのにふわふわ軽くて、飲むように食べた。うますぎ。


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マルイチ 材木町店

瓶ウニ探しの旅は続く

 

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マルイチというスーパーに来た。


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瓶ウニはない。しかしホヤはある。

ホヤ、どうぶつのもりで見たことある。


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3色トリノというアイスを初めて見る。なんかのドラマCDのフリートーク諏訪部順一さんが3色トリノの話をしていてなぜだか記憶に残っている。そのアイスの復刻版らしい。良い。

 

シライシのマーガリンサンドと力あんぱんをお土産に買う。力あんぱんは、『マツコの知らない世界』で紹介されていたので覚えていた。

 

光原社 可否館のコーヒーとくるみクッキー


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マルイチから少し歩いて光原社へ行く。美しいうつわなどを見る。 可否館は10時にオープンするというのでその時間に合わせて行ったにもかかわらず、先客が何人かいた。

 

13席しかないこじんまりとした店内に、ナイスカットミルがでかでかと置かれている。この店、信頼できる……。

 

店内の写真はNGだが手元の写真なら良い、ということでいそいそと撮らせてもらう。

 

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一杯ずつ丁寧に淹れてくださるので時間はかかるが、一口飲んだ時に感じた、「手間暇かけたコーヒーの味」がなんともたまらなかった。くるみクッキーはラタンのバスケットに積まれていて、ひとつ手に取りお皿に載せてくれる。小さな店内で女性の方2名で回しているお店ということもあってか、なんだか妖精や小人がやっている森の奥の喫茶店に紛れ込んだような不思議な感じがした。

 

店内から見た木漏れ日の正体。

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ここに雪がしんしんと降る日もあるのだろうか。光原社には庭があり、宮沢賢治の文章がずらっと壁に書かれているところもあった。中でも

 

この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ

 

という文章が目に留まった。

調べてみたら『永訣の朝』だった。

教科書で初めて読んで、初めて読んだときに多分泣いたと思う。この文章が目に留まったということは、私の中にはこの文章を覚えているパーツがどこかにあって、私の記憶が反応したということだと思う。雪。人が死ぬこと。

 

いきものたち

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モーリオでくるみクッキーをお土産に買った。前日と打って変わってこの日はよく晴れていた。


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盛岡 MOSSビルのベルプラスワン/パルクアベニュー カワトク

瓶ウニ探しと称したスーパー巡りは続く。

しかし瓶ウニはなかった。

 

ベルプラスワンではホヤが売っているのを見た。シライシのパンもたくさん売っていた。

 

カワトクは、魚がすっごい分厚かった。東京の鮭ってペラペラだよね。


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トマトもたくさんの種類がある。

同じトマトでもたくさんの選択肢から選べるということ、こういうことを豊かさって言うのかもしれない。


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カワトクでは岩手県産のりんごを使ったりんごジュースをお土産に買った。

 

もりおか歴史文化館

帰りの新幹線まで時間が余ったのでもりおか歴史文化館に行った。

 

チャグチャグ馬コ

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行った日がたまたま開館記念日だったので、企画展を無料で見ることができた。温泉の歴史に関する展示だった。人間は昔から温泉が大好きだったというのが分かる展示でよかった。私が旅行に行っている最中、パートナーも旅行に出かけているのだが、彼が今回の旅行で各地の温泉を巡っていることを知っているので、なんだか笑ってしまった。人間、温泉が好きすぎる。

 

きれいな紫陽花
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盛岡は、いたるところに花が咲いており、花がきれいな街だと思った。花の世話をして愛でる豊かさのある街。

 

ぴょんぴょん舎 盛岡駅前店

少しずつ新幹線の時間が近づいてる。橋を渡る。

昨日の大雨の影響で水位が上がっているし濁っている。昨日の大雨だと全然分からなかった街の構造が、晴れている日に歩くとすんなり理解できる。菜園、大通り、開運橋。

 

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はるばる歩いて昼ごはんに行きたかったお店に行くも「支度中」となっており断念。どうするかとうだうだしていたが、もう駅付近に戻ってきたら手前これ以上歩き回る元気はないので駅前のぴょんぴょん舎に30分ほど並ぶ。思いの外混んでおり、新幹線に乗る時間が刻一刻と迫ってきて、気が急いて、冷麺が出てきて5分で食べ切った。

 

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ここでは冷麺は別辛にしてみた。冷麺がキムチとは別に出てくる。辛さが調節できるのは良い。しかし急いでいるので何も別辛じゃなくてもよかった。味変を楽しむ余裕などない。おいしかった。この日は暑くて汗をかくほどだったから、前日の冷え込みとは違い、食べたあとしゃっきりした。やはりゆで卵の重要性がすごい食べ物だな、と思った。半熟ではない、固茹でのゆで卵が盛岡冷麺には必要なのだ。

 

さいごに・お土産

今回は旅行が始まる10日前に旅行に行くことを決めた。

以前何ヶ月も先の旅行の予定を綿密に立てていたところ、もう行った気になってしまい実際には旅行に行けなかったことがあった。

なので私にとっては10日前に思い立って旅行に行くくらいがちょうど良いのだと思った。

 

調べすぎないこと。

インターネットで得た知識を確認するだけの旅行にはしないこと。

 

最近、おいしいレストランに行くにしても、何にしても、インターネットで得た知識を確認する作業になっている気がしてならない。確認作業に成り下がっている。私が食べているのは食材の味ではなく情報だ、と思うときがある。

何もかも情報で埋め尽くすのではなく、自分の生の感情が分かる程度の余白を残しておくこと。

日々忙しくしていると自分の声に耳を傾けるのを忘れてしまう。

 

盛岡、良い街だった。

 

お土産たち 全部たべもの!

もう食べちゃったから無い。名残惜しい。

もっと買えばよかった。

奥州ポテトは大雨にさらされて箱がべこべこの状態で我が家にたどり着いた。

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