実家にいた頃、母に「ホットケーキ作りたい!」と言ったところ、台所にはホットーケーキミックスに加え、計量された牛乳とバター、すでに割られた卵と、ホットケーキを作るために必要なボウル、フライパン、お皿などすべてが用意されていたことがある。
21歳のときの出来事です。
当時すでにアルバイトをしていてホットケーキの材料を買うくらいの財力はあったし、材料を用意してほしいと頼んですらいない。ただ、私の実家はゴミ屋敷なので、台所には一人、せいぜい二人しか立てず、母が台所を使わないタイミングで、ひとりのびのびと台所を使いたい、そういった意味で「ホットケーキ作りたい!(だから私が台所を使っていいタイミングを教えてほしい。)」と言ったんだと思う。言葉足らずだったと思う。
家がゴミ屋敷のため人間が立つスペースが限られていることや、台所という場所は専業主婦の母の領域であるという認識だったため、当時は全くと言っていいほど料理をしたことがなかった。そういった状態の中、21歳にもなって、たかだかホットケーキごときで、「はい、どうぞ」と言わんばかりの(すべての材料を計量し、調理器具まで用意された)台所の光景を見て、私は本当に悲しくて腹立たしくて、母に対して泣いて泣いて怒った。
つい数ヶ月前に「ホットケーキ作りたい!」って言っただけで、母親はホットケーキミックスと卵とボウルとその他調理器具まで全てキッチンに用意してくれていた、別に頼んでもいないのに、しかも牛乳まで計量カップにはかって必要分だけいれてくれていた、もうそこまでくるとキツいので泣き怒りしました
— 赤埜よなか (@_ynk) 2015年5月29日
母は私のためを思って材料や調理器具を用意してくれたんだろうけど、21歳にもなってこんなことをしてもらっているのがものすごく恥ずかしかったし、私にはできないと思われているような、ナメられているような感じがしてすごく悔しかった。
私は、材料を買い、牛乳を計量し、慣れない台所で調理器具を探すところからやりたかった(ゴミ屋敷の整理されていない棚からがらがらと色々調理器具が崩れ落ちてくるとしても)。生地を作り、焼いた末に半生でもコゲコゲでもそれすら経験にしたかった。準備や失敗まで含めた一連の体験をしたかったのに、母は大事な娘が転ばないように先回りして石を拾ってくれるようなひとだった。
ホットケーキなんか母の許可なく作ればいいだろうと思うひともいるだろうけれど、実家では「テレビつけていい?」「エアコンつけていい?」とすべて許可を取りながら生きてきたので、まあ、察してください。
そういったいきさつがあり、一人暮らしを始めたときの嬉しさと感動はひとしおだった。裕福でないにしろ、誰の許可もなく自由に生活ができること。下手でも要領が悪くても時間を気にせず料理がひとりでのびのびとできること。自分で稼いだ金で生きられる嬉しさ。
家に居場所がないわけではない、まあ自立するほどのお金はもってないけど、親が無意識で行っている営みに腹を立てて 文句を言う自分がつらい 無意識の善意にイライラしたり悲しくなったりして 「それ言われてつらかった」って本人に伝えたところで善意でやってるんだから 伝わらないし
— 赤埜よなか (@_ynk) 2014年12月21日
これは2014年のツイートで、つまり20歳のときのこと。
最近は少しずつ変わってきてはいるけれど、パートナーに対しても「それ言われてつらかった」と自分のつらさを主張しても、言葉が届かなくてつらい思いをしていた。人生同じことを繰り返してばかり。でも、ときどき変化が訪れるときもある。しんどいけれど、絶えず他人とコミュニケーションをやっていくしかない。
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結婚して、また実家にいたころのような自分に戻っているような気がする。
旅行の計画ひとつにしても、パートナーが先回りして全部旅行の予定を決めてくれる。行く場所も、ホテルも、レンタカーの手配も何もかも全部。
今回のゴールデンウィークは浜松~伊勢・鳥羽~松本へ旅行に行った。
何度も「私は何もしてないから」と口にした。旅行の計画・予約から、車の運転まですべてパートナーがやってくれて、私は本当にただついていくだけ。何も貢献できていない、ただ行きたいところに連れていってもらって、助手席でおしゃべりするだけ。
パートナーは「このホテル予約しておいたよ~、もし支障がある場合はあとでキャンセルすればいいから」とわりと私に相談なくパパッと予約をして事後報告をしてくる。
そういうことの積み重ねで、旅行の日が近づくまでほとんど旅行の日程を把握していないケースがある。パートナーから口頭では都度どこの何を予約したと共有はされているけれど、その全貌が私には見えないため(パートナーの頭の中にはイメージがしっかりある)、旅行が近づいてやっとノートに書き起こして整理して、そのときに初めて私の理解が追い付くことがたびたびある。
本当はもっと良いホテルに泊まりたいと思っていたり、別に温泉はついてなくてもいいと思っているけれど、温泉好きなパートナーが予約をしてくれているから何も言えない。去年パートナーが仕事をいきなり辞め年収が格段に下がったこともあり、値が張るような要望も出しづらい。そしてその値段が高い理由が目に見えないサービスのケースが特に難しい。本当は星野リゾート的な、宿泊先にもお金をかけて心を癒したいと思うけれど、いつもドーミーインとかルートインとかになりがちである。
それでいい、相手に任せて甘えてしまったほうが楽だと頭では分かっていながらも、それでも自分の無力さや役に立たない感覚が身を刺すようにつらい。
あまりに私が計画フェーズに参加していないために、なかなか旅行自体に興味を持てないし、覚えてもいられない。どういう思いでこのホテルを予約したのかとか、どんな道路で行くとか、何時に出発するとか、そういうものを全く理解できないのが悲しい。理解したい。全部やってくれてありがたいけどしんどい。
パートナーが悪いという話ではなく、私の旅行に対するエンジンがかかり始めるのが遅かったり、もっとグイグイ計画に割り込んでいけばいいだけなのに、面倒くさくてパートナーが決めてくれたものをわざわざ覆す気にもならない。
パートナー、例えば旅行となるとずっと旅行の計画を立てて お店や宿や道をずっと調べていて、彼は好きでやってくれているのだろうが、私はそういうことができない(相手のために時間を費やせない)から申し訳なくなる https://t.co/O5RmxCaDLt
— 赤埜よなか (@_ynk) 2022年1月10日
私としては、パートナーと相談しながら予定を立てていきたい。どこのホテルに泊まるか、どこに行き何を食べ、どんな観光をするか、そういうことを考えている時間を楽しみたい。計画フェーズから参画したい。中途半端に参画するとそれはそれで揉めるので、やるなら休日に時間を取って取り組みたい。(まじめ)
この話をパートナーにしたところ、「あとでキャンセルすればいいからと全部予約するのはやめる、予約する前に相談するね」と話していた。事後報告が事前報告になっただけでは意味がなく、そうじゃなくて一緒に探すところからやりたいんだけど…と、絶秒に意図が伝わっていない気もする。また次の旅行の計画のときにちゃんと話す必要がある…。
↓浜松で食べたうなぎ。(つらい話が続くので、食べ物の写真ででほっこりしたい意図があります)
井之頭五郎さんが食べてたうなぎを食べたよ🥳 pic.twitter.com/dA3e8c7hg5
— 赤埜よなか (@_ynk) 2022年4月29日
旅行だけではない。料理に関しても同様で、稀にパートナーと一緒に料理をしようというときも、ほとんどパートナーがすべてやってくれる。(基本的にお互いばらばらにご飯を用意して食べる生活をしているが稀に一緒のときもある)
この記事にも書いたけれど、「お前の米は古いから虫が湧いていると思う」「今までおまえが作ってきたご飯はおいしくなかった」「おまえはおいしくしようとする努力をしていない」みたいなことを散々言われてきたので、その言葉を思い出して怖くて足がすくむ。同時に、パートナーに全部任せて私は何もしてあげられない、無力だ、みたいな感情で病む。
以前一緒に料理をしようということになり、麻婆豆腐を作ったこともあるけれど、それもパートナーがお膳立てしてくれていた。パートナーが材料を買ってきてくれて、パートナーが豆腐を切ってくれ、私が肉と豆腐を炒めていた。なんか違う。一緒に料理ってそういうことじゃない。
パートナーは、私の「一緒に料理をしたい」という欲望を満たすために動いてくれたに過ぎない。そうじゃない、そうじゃないんだよ……。
我々夫婦は一緒に何かをしようとすると揉めるので、相手に任せて口出ししないほうが平和に行く気もしており、なかなか難しい。パートナーからこれまで言われてきた言葉の数々も足枷になっており、都度怖くなる。
お膳立て(材料の用意とか、旅行全部予約済とか)はされたくない、けれど、これまで言われてきたこと、やられてきたことの数々が思い出されて怖い。
結果、病む!!!!!
- 料理関連
- 「お前の米は古いから虫が湧いていると思う」→料理するの怖い
- 「今までおまえが作ってきたご飯はおいしくなかった」→料理するの怖い
- 「おまえはおいしくしようとする努力をしていない」→料理するの怖い
- 「おまえが皿洗いすると汚れが残ってる」→なるべくパートナーの皿洗いはしない。するときは一度洗ったあと目視で確認し、必要に応じて二度・三度洗う→食洗器があればいいのにな→「食洗器を買ってもおれは手洗いを続ける」→食洗器ほしいけど、怖くて買う決断ができない
- 旅行関連
- 私が事前に計画したルートをパートナーに伝えておいたにも関わらず、当日知り合ったレンタサイクルのおっちゃんが教えてくれたルートを採用される→普通に悲しい。しかも特に合理性とか効率性とか理由がなかった。おっちゃんのルートの方が行きやすい、とか理由があれば全然納得できた。
一人暮らしをしていたころ、結婚をする前は、友人との旅行や食事の予定は私が率先して探して予約をしていた。そういった能力はあるのに、現状できていないのがもどかしい。どんどん能力がなくなっていく気がして怖い。
そして、これまで言われてきた言葉の数々に足がすくみ、何もかもパートナー任せになり、パートナーに依存するような状況になっているのがとてもつらい。最終的に自分じゃ何もできなくなり、何も決められなくなり、脳死状態になってしまう気がする。
ついにパートナーに貢献できることが金銭面だけになる(転職して給与がバカみたいに増えた)。そういった状態が続いていくと、「誰の金で生きてると思ってるんだ!?」という父のようなモンスターに私もなってしまうような気がして怖い。
モンスターはこうやってできあがるんだとやっとイメージができた。金でしか威張れない、金でしか頼られない、だからそういう発言が出てくる、かわいそうな生き物。
どうしたらいいんだ~~~~!!!
相手に任せて甘えるというのもある種の自立だと思う。相手に任せたくせに、自分の無力さに不安になってしまうようじゃまだまだ甘え能力が足らんと思う。
パートナーから言われた言葉に縛られずに、自由に動きたい。思い出したくない。
もう少しお膳立てされないような工夫をしたい。どうしたらいいか分からないけれど。
お膳立てされる前に何か自分から先手を打てればいいのだけれど。