「靴紐がほどけてるの教えてあげたい」
というパートナーの言葉を聞いて初めて、駅のホームに並んでいる女性の靴紐がほどけていることに私は気がついた。
その女性は友人と一緒にいて、「二人で話しているから靴紐がほどけていることには本人も気づいていながらも靴紐を結ぶタイミングを切り出せないんじゃない?」と適当なことを返しながら、「靴紐がほどけてるの教えてあげたい」というパートナーの言葉を反芻した。
人生において、「あ、あの人靴紐ほどけてるな」と気づくことはあれど「教えてあげたい」なんてことを思ったことはなかった。
実際に声をかけて教えてあげるかどうかはともかくとして、ただの他人にそういった眼差しを向けられるパートナーは心底優しい人なのだなと思った。
幸先の良いはじまりだなと思った。
これから島根旅行に行く。サンライズ出雲に乗って。
崎陽軒と東海道線
サンライズ出雲の発車時間の一時間前に駅に着いた。パートナーとは駅弁を買おうと前もって話をしていたのだ。
横浜駅。
いつもは東京駅から新幹線に乗るけれど、今回は横浜駅からサンライズ出雲に乗ってみようということで、横浜の駅弁を調べてみたら、崎陽軒しかなかった。崎陽軒、しか、ない……。
神奈川生まれの私にとっての崎陽軒とは、どこの駅にもあるお弁当屋さんというイメージで、わざわざありがたがって食べるようなものではなかった。しかし、食べ飽きるほど崎陽軒を食べたことがあるのか?と聞かれると、片手で数えるくらいしかおそらく食べたことがない。(崎陽軒本店でアフタヌーンティーを経験したことはある。あれはよかった)
高校生・大学生のとき通学時に当たり前に視界に入っていた崎陽軒の店構え。なんだか気乗りはしなかった。シュウマイより餃子の方が好きだから、シュウマイってもう2個くらいで満足する気がする、久しく食べてないけれど。
「シュウマイって、たまに食べるから美味しいんだよ」
これまで旅行に行くときに崎陽軒のチャーハン弁当を自ら選んで食べてきたパートナーはそう言った。まあそういうものなのかな、ものは試しで食べてみよう!と思った。グリーンピースがいやだけど炒飯弁当の小さい方(『横濱チャーハン』というものでシュウマイが2つのお弁当。※『炒飯弁当』はシュウマイが3つ入っている)を買おうと前日の夜に決めた。
また、崎陽軒のサイトを見ながら、シュウマイを買うとついてくるシュウちゃんがかわいいからいつか欲しいね、とパートナーと話した。
ちょっと前にイナダシュンスケさんがシュウマイ弁当の食べ方について哲学のように話していた気がするし、あれだけ店舗展開をしているということはきっとおいしいに違いない。いつも変わらずにそこにある、スタンダードな食べ物のありがたさ。
意気揚々と横浜駅に着いて、崎陽軒の中央店に行ったところいくつかあるお弁当のサンプルの前に全部「完売御礼」と札が貼られていて膝から崩れ落ちる思いだった。
そうだった。駅弁というのは旅が始まる朝に買うもので、寝台列車のサンライズ出雲に乗る人は限られていて、しかも横浜駅から乗る人というのはさらに限られていて、この時間に駅弁が無いのも当然だった。「中央店がダメなら他の店舗は!?」と思って調べたけれど、中央店を除き他の店舗は20時~21時閉店で、中央店が唯一22時閉店の、最後の灯、崎陽軒 横浜駅中央店なのであった……。
とにかく今は食糧は確保せねばならない。事前に飲み物やお菓子は確保していたし、夜ご飯も家で済ませてきた。しかし、崎陽軒をアテにしていたので翌朝の朝ご飯が無い。旅の楽しみの一つでもあるお夜食用のご飯も無い。仕方なくNewDaysでおにぎりやパンを買った。NewDaysは異様に混んでいたし、みんな高揚している雰囲気があった。週末だからだろうか、横浜に観光に来た人たちだからだろうか。
そして買い物を済ませてホームを通り、「靴紐がほどけてるの教えてあげたい」という先のパートナーの発言に戻るのである。
改札を通るとき、乗車券と特急券・寝台券を2枚重ねて改札機に入れたら通れなかった。駅の係員に聞くと、乗車券だけ改札機に入れればいいらしい。新幹線だと切符を2枚重ねて入れるのが当たり前だが、サンライズ出雲は新幹線ではないし、東海道線のホームから出発する。東海道線のホームでサンライズ出雲を待っているとき、なんだか不思議な気持ちだった。
私は生まれてから一人暮らしをするまでずっと東海道線に乗り続けてきた。朝のラッシュで本も読めない日はざらにあったし、誇張ではなく本当に骨が折れちゃうんじゃないかというくらいの混雑の中、社会人一年目のときは実家から会社に通勤していた。半年も経たずにこの状況で通勤は無理だと思い、東海道線は使わない別の沿線で一人暮らしを始めた。
大船駅から戸塚駅までが長いこと。大船駅のあたりで観音様が見えるから「今日一日いい日になりますように」とお祈りするのが母からの教えであったこと。戸塚駅から横浜駅に行くにはもっと時間がかかるし、品川駅なんて本当にありえないくらい遠くて、具合が悪い中電車に乗って、車内で脂汗が止まらなくて品川駅に転がるようになんとか降りてぶっ倒れたこともあった。決していい思い出だけではない、東海道線。
今日はここからサンライズ出雲に乗るんだ。
駅のホームのベンチに座りながら下りの東海道線に乗り込む人々を見ていた。
「東京の感じと全然違うね」とパートナーが言う。「スタイリッシュじゃないよね、でもそれが私としてはすごく馴染みがある感じなんだよね」と私は言う。おしゃれすぎない人々の様子がとても落ち着く。
サンライズ出雲

サンライズ出雲が来た。乗った。
東京駅から乗った人たちがすでに酒盛りを始めていた。しかも部屋のドアを開けているから、廊下を通るときに彼らの様子が若干視界に入った。一人部屋にもう一人が押しかけて、酒を飲んでいる形だった。
部屋に入り、鍵を閉め、なんだか嬉しくてたくさん写真を撮った。

すぐに備え付けの寝巻きに着替えた。寝巻きのサイズがフリーサイズと大きいからか萌え袖になる。ひとりでに自撮り。寝巻きの帯が短い。太ってる人とかどうするんだろう、結べるのかな……?とちょっと思った。
しばらくすると女性の車掌さんが切符の確認に来て「入鋏(にゅうきょう)済」のスタンプを押してくれた。
その後、トイレに行ってみた。電車のトイレってなんだか変な感じがする。電車はものすごく早く動いているのに、人は個室で排泄をする。出るものも出ない気がした。
サンライズ出雲に乗って気が付いたこと
まず、ティッシュがない。なので持参したほうがよかった。
次に、部屋に入ったらすぐ手を洗いたいなと思ったが、当然部屋の中に洗面所はないのでトイレ近くの洗面所を使う必要があった。いつでも手をきれいにできるよう、ウエットティッシュを持ってきていてよかった。
あと結構音がするので、先日買ったLoop Switchという耳栓が寝るときなどに役に立った。
「電気を消すときれいだよ」
パートナーが私の部屋に来て一番にそう言った。こういうささやかな楽しみ方を見つけるのがパートナーはすごく上手だなと思う。こんな夜に電車に乗ることなんて今までなくて、電気を消し、車窓から眺める夜の町がとても美しかった。私たちは何もしゃべらずにただただ景色を眺めていた。
熱海あたりを通るとき、線路のすぐそばに海があった。『千と千尋の神隠し』みたいだと思った。夜の海が月に照らされて波が光っている。海の上を走っているような感覚になる。そしてすぐにその光景が遠くなる。
子どもの頃、旅行に行くときに車の後部座席で寝ているときの感覚を思い出した。運ばれている感じ。
今回私たちはそれぞれシングルの部屋に泊まった。私は禁煙の部屋、パートナーは喫煙の部屋。電車の中で煙草が吸えるってすごい。
車内を見て回ることにした。ノビノビ座席やシングルデラックス、サンライズツインを通ってラウンジに行った。照明が明るいからか、ラウンジからはあまり外の景色は見えなかった。そして、ラウンジ3席分を使って寝ている人がいて本当にびっくりした。「自分の部屋で寝ればいいのに、なんでラウンジで寝ているんだろう?」とヤバい人を見る目で最初は見ていたけれど、もしかしたらノビノビ座席で隣の人がうるさいとか臭いとか、そういう何らかの理由があって、こんな寝にくいラウンジの椅子で寝ているんだろうなと思って怒りがおさまった。人には人の事情がある。
自販機には250ml缶のコーラが売っていた。なんだか懐かしい。パートナーが「記念に」と1本買っていた。
朝、気づいたら6時半だった。朝の陽ざしの眩しさで目が覚める。やはり眠りは浅かった気がするが、こんな目覚めも悪くない。その後、サンライズ瀬戸とサンライズ出雲の切り離し作業のときも目は覚めていたけれど特にホームには降りなかった。たくさんの人が写真を撮りにホームに降りていた。みんなたのしそう。

松江フォーゲルパーク
出雲市駅に着いた。ホテルに荷物を預け、一畑電車で松江フォーゲルパークへ向かった。
切符を駅員さんに渡してパチンと鋏を入れてもらう。出雲大社前行の北松江線に乗り込むと、爪も髪も化粧も持ち物もすべてが派手なギャルが目の前に座ってきた。その隣にはヘルプマークをつけた女性が座っていた。特に気にしていなかったのだが、私たちが川跡駅で乗り換えるとき、ギャルがヘルプマークをつけた女性に「何かお手伝いしましょうか」と声をかけていた。私たちが乗り換えた松江しんじ湖温泉行の北松江線に、ギャルとヘルプマークをつけた女性も乗ってきた。それから松江フォーゲルパーク駅で私たちが下りるまで、ギャルとヘルプマークをつけた女性はずっと喋っていて、明るい笑い声が響いていた。すごく仲良くなっているのが声音から分かった。島根、いいところだな、と思った。
車窓からは畑に白鳥が訪れているのを何度も目にした。黄色や緑など色とりどりの田畑に、まっしろの白鳥が飛んでいる違和感。しかしとても美しかった。
さて、フォーゲルパークに到着。
パートナーは鳥が好きである。
「お昼に河原を散歩していたらホンセイインコがいた」とか「煙草を吸っていたらアオサギの鳴き声が聞こえた」とか「セキレイやオナガを見かけた」としょっちゅう言っている。
白鳥と波紋、きれい

パートナーは動物と関わる仕事をしていたからか、動物と仲良くなるのが上手い。手を差し出して、警戒する鳥に手を甘噛みさせてから、自ら鳥が近寄ってくるのを待っている。私はビビってしまってできなかった。
甘噛み

一旦距離を取る
再度甘噛みして確認
パートナーの顔を確認
大丈夫だと判断して、乗る

あと私の好きなオオハシ

バードショーがすごくよかった。「猛禽類の狩りの様子を見せます」というショーの中で、失敗しても鳥のせいにしないで、あくまで人間側の対応が悪かったんだというふうな声かけをしていた。「(鳥に対して)トンボが気になるんだよね。(観客に対して)今日はトンボがたくさんいて鳥たちの注意はそちらに向いているみたいです(だからうまくいかなかった)」とか、「羽を広げているのは、暑いからなんです」と失敗してもその原因を話してくれるのがとてもよかった。うまく成功することは確かに素晴らしいけれど、人間を楽しませるショーというビジネスのために調教された姿にはグロテスクさを感じてしまうし、あくまで鳥ファーストでショーが行われている感じがとてもよかった。
また、「鳥たちが後ろからやってきますよ」と言われ観客が後ろを振り向いていたら一向に鳥はやってこず、「どういうこと?」と思って前を向いたらヨチヨチトコトコと鳥が前からやってきていて、あまりのかわいさと驚きに叫んだ。ただ鳥が歩いてくるというそれだけなのに、見せ方がすごく上手い。
そのあと、「猛禽類の狩りの様子をもっと見たいですか?」「見たーい」「見たいって言ったのはあなたたちですからね(どんなことになっても知らないですからね)」というようなやりとりがスタッフと観客の間で発生し、一瞬ピリっとした雰囲気が流れたあとにほっと笑いが生まれる、という緩急をつけた観客を巻き込む形でショーをしているのがとてもよかった。
手乗り体験もした。以前、掛川花鳥園でフクロウの手乗り体験をしたことがあった。今回はワシノスリの手乗り体験をさせてもらった。しかも、ただ腕に乗せてくれるだけじゃなくて、ちょっと離れたところからワシノスリがビューン!と飛んできてズシン!と乗っかってくれる。すごく重くて腕がぷるぷる震える。普通に危険なので、スタッフの方がワシの視界の入らないところにお客さんが入り込んだり走り回ったりしないように周囲を見渡しながら対応してくれる。また、写真のうつりも気にしてくれていて、腕の角度をこうするとかっこよくなりますよ、とか、色々教えてくれた。スタッフは一人しかいなくて、集金、ワシノスリのコントロール、体験する人への指示、周囲の状況確認、必要に応じて写真撮影など全部一人で対応していてヤバかった。
↓テンションあがりすぎてインスタのストーリーに投稿した

出雲大社周辺の散策
おふく焼きを買った。
そして16時にようやく昼ご飯として出雲そばを食べた。荒木屋に行きたかったけれど店先まで行ったら臨時休業の張り紙が。第二候補だった田中屋にて三食割子そばを食べる。暑くて足の疲れも出てきたところだったのでそばの美味しさが染みた。

出雲大社

出雲大社に来るのは2回目。パートナーは初めて。私は子どもの頃、神奈川から島根まで父が車を運転して連れてきてもらったことがある。しかし全く記憶にはない。
拝殿

これがガイドブックで見たしめ縄かー!と思って写真を撮る。御朱印をもらう。初穂料がお気持ちとのことで、なんだか試されているような感じがして緊張感が走る。そのへんをウロウロして帰る。
実は出雲大社そのものより、その手前にある森で、鳥の鳴き声を収集するのに私たちは熱中していた。ほんとに、30分くらいはずっと森でワチャワチャと鳥の鳴き声収集をしていた。ヤマガラ、エナガ、ヒヨドリなどがいた。さっきまでフォーゲルパークで散々鳥を見たのに、出雲大社に来ても森の中で鳥鳥鳥……。
↓私たちはずっとここで鳥を探していました

私たちはここで重要なことを見落としており、そのことは数時間後、ホテルでようやく気づくのでした……。
PLANT

私は旅行先の地元スーパーに行くのが大好き。PLANTは「生活のよりどころ PLANT」と看板があり、本当に超巨大なスーパーだった。同じ種類の梨を横幅広く陳列している様子にテンションがあがる。葡萄はサマーブラック、藤稔、巨峰、ニューピオーネ、ピオーネが並んでいる。牛乳も見たことがない商品が売っている。


私の目当てはなんぽうぱん!コーヒーバラパンと塩パンとネオトーストを買った。

のどぐろ日本海

21時、遅めの夜ご飯。のどぐろをたくさん食べた。のどぐろ丼、のどぐろの焼き物と煮物などをいただく。のどぐろって見た目が淡白だからつい味も淡白だと勘違いしてしまうのだが、結構味が濃くてパンチのある味をしている。金沢でも同じことを思った気がする。
ホテルにて ようやく気がついたこと
くたくたでホテルに帰ってきて湯舟を張る。パートナーがお風呂に入っている間に、持ってきていたガイドブックを改めて開いてみる。出雲大社のところでページをめくる手が止まった。今日見たしめ縄と、ガイドブックに載っているしめ縄が、なんか、違う……?
今日私たちが見たのは拝殿のしめ縄で、左手奥には神楽殿があり、今日見たものよりもっと大きなしめ縄があるのだと、このとき初めて気がついた。ガイドブックは事前に読んでいたはずなのに、あまりの疲れからか一番目玉の神楽殿を見落ないで帰ってきたのであった。
「衝撃の事実なんだけど」とパートナーにも神楽殿のことを伝える。二人で大笑いした。
私たちは今日出雲大社に行って拝殿のしめ縄を見て「やっぱりガイドブックで見るのと実際に生で見るのは違うね」という会話をしていたが、ガイドブックにでかでかと掲載されているのは神楽殿のしめ縄であって拝殿のしめ縄ではないので、違って当然なのである。そんなことも知らずに鳥の鳴き声収集に熱中して、浅瀬でバチャバチャしていた私たちは一体なんだったのか。
「でもまあこれも旅の思い出だよね」と笑いながら、スマホでは「出雲大社 神楽殿 行くの忘れた」と検索して私たちと同じミスをおかしている人を探して、なんとか自分たちを肯定しようと必死だった。こんなの恥ずかしくて誰にも言えない…!
「また次の機会には神楽殿を見にいこうね」と話していたが、「やっぱり明日早起きして行くべきでは……?」という話になった。明日はお土産を買って帰るだけの予定で、早起きすれば行けないわけでもなかった。よし行くかと決めておふく焼きを食べてぐっすり寝た。サンライズ出雲では眠りが浅かったので、ホテルのベッドで静かに眠れるのがなんともありがたかった。

寝る前、ホテルのテレビで見た株式会社MarkenのCMがよかった。鳥取・島根を中心に事業を展開する総合人材サービス企業で、CMはドット絵だった。今日乗った一畑電車も描かれていた。
日本海テレビでは中尾真亜理さんの『オンガクお嬢Remix』という謎の番組が放送されていて、スタッフと喋りながらクダを巻く様子が『水曜どうでしょう』みたいでおもしろかった。ローカルテレビ、こういう謎の番組と出会えるから良い……。
2回目の出雲大社
一畑電車にも乗り慣れた。日中帯は基本的に1時間に1本くらいしか来ないので、電車の時間に合わせて行動する必要がある。東京だと数分待てば大抵次の電車が来るのでそこまで電車の時間を気にしたことがない。
川跡駅では昨日と今日とで乗り換えのために何度か降りた。北松江線と大社線の電車が集まって皆が各々乗り換える感じがとても良い。

あと、一畑電車は駅のホームに駐輪場がある。錆びた自転車もいくつかあって、持ち主不在のままそこに放置されているのがわかる。持ち主は鍵をなくしてしまったのかなと思いを馳せる。

出雲大社前駅に着く。ブーランジェリー ミケにてパンを購入。昨日も訪れたけどパンは売り切れだったので、今日購入できてとても嬉しい。
出雲大社に向かう道中でうさちゃんの置物もおみやげとして購入。
そして2回目の出雲大社へ。
大鳥居をくぐると下り坂になっている。ディズニーランドと同じ仕組みだ、と思った。行きは下り坂で足取りも軽い。帰りは足も疲れているので上り坂はキツイ。

神楽殿、行った。拝殿のしめ縄とスケールが全然違ってワロタ。来てよかった。

昨日はまわらなかった素鵞社、文庫、彰古館、西十九社も見て回る。

彰古館、全部木でヤバい(何の知識もない人の感想)。ふすまというか窓のところって開くのだろうか。

西十九社。全国の神様が大集合したときに泊まる宿、横に長くてかっこいい。
やくもで帰る

一畑電車のスイッチバックにも都度テンションがあがりながら、出雲大社から帰ってきた。一畑電車にはしまねっこがいる。切符も鋏を入れてもらった。「昔は駅によって鋏の切り口から違ってそれで駅を判別していたんだよ」とパートナーが教えてくれる。
出雲市駅周辺でお土産を購入して、やくもまでしばし待ち時間。

やくもに乗って、駅弁を食べる。
車内は全体的に丸みを帯びていて、木材のあたたかみがあって良い。
やくもに乗りながら『夜明けのすべて』を見た。いい映画だった。上白石萌音さん演じる主人公がPMSで豹変してぶちギレている様子が私にそっくりでパートナーが怯えていた。
岡山駅に到着して、新幹線のホームに向かった。新幹線の到着まで少し時間があり、パートナーは喫煙所で煙草を吸いたいので荷物を持っておいてほしいと言われた。そのとき差し出されたのが駅弁のゴミ袋で、「あれ?」と気づいた。「ねえ、大きいボストンバッグはどうしたの?」
気づいたときには二人して顔面蒼白になってホームの階段を駆け下りていた。どうしたらいいのか分からない。窓口で「やくもの荷台に忘れ物をしました」「でも取りに行ったら新幹線の時間に間に合わないんです」と早口で伝える。ヤバい、ヤバいヤバいヤバい、お土産がパートナーのボストンバッグの中に入っている。今日買ったばかりの可愛いうさちゃんの置物もボストンバッグの中だ。二人で食べようねと買ったおせんべいも、ラーメンも、全部……。「こちらに電話してみてください」と遺失物管理センターみたいな連絡先を渡される。とりあえず心臓ばくばくのまま新幹線のホームに戻る。
「気づいてくれてありがとうね」「煙草どころじゃなくなっちゃったね」「やくもは岡山で終点で、この先車庫に入るってアナウンスされていた気がするから、そのときに見つけてもらえるよ、盗まれたりはしないと思う」「でも盗まれて見つからなかったらどうしよう」「長年使ってきたボストンバッグだもんね」などと口が止まらない。
新幹線に乗り込み、パートナーは早速遺失物管理センターに電話をしにいった。荷物の特徴や座っていた座席、連絡先などを伝えたそう。電話をしている最中、なんで私はやくもを降りるときに気づけなかったんだろうと思った。「忘れ物無いね」とパートナーはやくもを降りるときに確認していた。でも、荷台のほうは見なかったのだ、普段荷台を使わないから……。
なんだか泣きそうになってきた。このままボストンバッグが見つからなかったらどうしよう。冷静に考えれば別に私のボストンバッグではないのだから、泣きそうになるのは大げさな気もするのだが、やっぱりパートナーが年季の入ったボストンバッグを使っているのをそばで見てきたし、長年愛着を持って大事にしてきたことが分かるからこそ、パートナーの手元に戻ってきてほしいと願って、戻ってこなかったらどうしようと不安で涙ぐむのであった。
数十分後、折り返しがあり、ボストンバッグが見つかったとの連絡があった。
よかった。本当によかった。たった数十分だったけれど、生きた心地がしなかった。よかった。今は手元にはないけれど、いずれ着払いで届くそう。可愛いうさちゃんの置物は今どこにいるんだろう。不安かもしれない、などと会話しながら帰路についた。
数日して、ボストンバッグが家に届いた。
うさちゃんの置物も無事お家に到着。
おみくじには「大吉」と書かれている。
何もかも、運が良かったとしか言えない旅行だった。

今回の旅行はドタバタだった。でも結果としてそれはそれで良い思い出になった。
私たちがサンライズ出雲に乗ったのは8月下旬だったのだが、その前は南海トラフが来るとか来ないとかで一週間ほどサンライズ出雲が運休になったことがあった。また、私たちが旅行に行ったあとには台風が来て、それもまた運休になる日もあったらしい。サンライズ出雲、ただでさえ切符を購入するのが困難なのにもかかわらず、切符を購入できたとしても何らかの事情で運休になることもあるので、今回乗れて本当によかった。
初めての寝台列車。次乗る機会がいつかまた来てほしい。楽しかった。