嬉しいはずなのに つらい

 

これまでパートナーから「おれはそんなことで傷つかない」「おれそんなに悪いことした?」と散々言われてきたけれど、そういった発言が精神的な暴力にあたること、他人の悲しみや傷つきをそういった言葉で軽んじることは二重の加害であることをようやくパートナー自身が気づいてくれた、ということをこの前書いた。

 

 

この記事では省略していたけれど、「お前の米は古いから虫が湧いていると思う」と言われたときに、併せて「今までおまえが作ってきたご飯はおいしくなかった」「おまえはおいしくしようとする努力をしていない」と言われていた。

 

今日書くのは、加害性に気づいたパートナーが話を聞いてくれ寄り添ってくれるようになって嬉しいはずなのに、過去のパートナーによる暴力的な発言は私の心に刺さったままなので、感情がグチャグチャになってつらい、という話です。

 

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私はこれまでパートナーのためにご飯を作ってあげたい、という感情をずっと持っていて、でも、パートナーは「頼まれてないのに勝手に飯を作って食べてほしいと相手に期待するのは傲慢であり、『食べる?』と聞いたときに『要らない』と言われてもおれは全然傷つかない」と言うので、作ってあげたいなあ、おいしいと言ってもらいたいなあと思いながらも、要らないと言われるのが怖くて、ほとんどパートナーに対してご飯は作らないようにしてきた。

 

パートナーは『要らない』と言われても傷つかないタイプの人間なので、「『要らない』と言われるのが怖い」という感情は持ち合わせていない。そういう怖さや躊躇いを感じないで無邪気に料理を作るパートナーを、私は羨ましく思っていた。

 

このあと、「今までおまえが作ってきたご飯はおいしくなかった」「おまえはおいしくしようとする努力をしていない」と言われたことによって、パートナーに食べてもらうかどうかに関わらず、料理をするたびにこの発言を思い出し、つらくなるようになってしまった。

 

先に書いたように、パートナーはこれまで精神的な暴力を振るってきたということや、二重の加害をしてきたことにようやく気づいてくれて、そのこと自身は本当によかったと思っている。

最近のパートナーは私の話を聞いてくれ、寄り添ってくれるようになった。優しく接してくれるようになった。つらさを受け止めてくれるようになった。

 

今日は、ガパオライス、かぼちゃのサラダ、きゅうりの浅漬け、大葉とミョウガしらすの味噌和えを作っていて、料理ができたときには、いい匂いだねえ、おいしそうだねえとパートナーに言われた。

 

「今までおまえが作ってきたご飯はおいしくなかった」

「おまえはおいしくしようとする努力をしていない」

 

作っているときには過去の発言を思い出してつらくなっていて、私がどんなにおいしくなるよう努力をしていても、私自身おいしいと思って食べていても、他人にとっては努力をしていないことになるし、結果としておいしくないものができあがる。

 

そんな他人の評価など、パートナーの感覚などどうでもいい、私がおいしいと思えばそれでいいじゃないかと頭では分かっているのに、

 

いい匂いだねえ、おいしそうだねえとパートナーに言われたとき、頼むから料理を見ないで、と思った。

恥ずかしくて、惨めな気持ちだった。

 

別にパートナーは気を遣っていい匂いだねえ、おいしそうだねえと言ったわけじゃない。

 

だからこそ恥ずかしくて惨めな気持ちになる。

 

おいしくないとパートナーが言ったことは事実で、いい匂いだなあと言ってくれたことも事実。

いい匂いでおいしそうであっても、おいしくない、ということは全く矛盾なく両立する。

 

結局自分の気持ちの問題でしかない。

 

あんなに話を聞いてほしい、寄り添ってほしいと、喉から手が出るほど切望していたはずなのに、いざ話を聞いてくれ、寄り添ってくれるようになると、感情がグチャグチャになってしまう。

 

今までだったら「おれそんな悪いことした?」「同じことされてもおれは傷つかない」と言われ続け、どんなに言葉を尽くしても届かなかった思いが、今は届いてしまう。

話を聞いてくれている、寄り添ってくれている。

 

結局自分の気持ちの問題でしかない。

 

私の料理に対して気を遣ってコメントをしてほしいわけでも、コメントを控えてほしいわけでも、料理を見てほしいわけでも見てほしくないけでもない。好きにしてくれて構わない。

 

ただ、過去にパートナーに言われた言葉をまだうまく自分の中で昇華できていなくて、優しくなったパートナーの態度も受け入れる方法がよく分かっていない。

 

急に優しくされるとどうすればいいのか分からなくて困る。どう処理したらいいのか分からない。どうすれば恥ずかしくて惨めな気持ちにならなくて済むのか、パートナーの過去の暴力的な発言と、今の話を聞いてくれる姿勢の折り合いをどうつければいいのか分からない。

つらい。嬉しいはずなのにつらい。