尊敬しているひと。
子どものころの将来の夢。
お花屋さん、バレリーナ、作詞家、ディズニーのキャスト。
3/21、坂本真綾さんの25周年記念LIVE「約束はいらない」に行ってきた。
この日はとてつもない暴風雨で、何度も何度も傘がひっくり返ってはその度に傘の端っこをなんとか持って戻すという作業を繰り返し、横浜アリーナに着くころにはスニーカーは浸水、靴下もビチョビチョで、誰が好き好んで日曜日の暴風雨の中外出するんだよ……というようなひどいお天気でした。強欲なので、なかなか行かない新横浜、近所にないニトリとおいしいと有名なパン屋さんに行くぞ!と気合で行ったら足がビチャビチャのビチョビチョでおしまいになったのでした。
真綾さんのことを何がきっかけで好きになったのかあまり覚えていないけれど、真綾さんの音楽を聴き始めたのは2011年2月頃、好きになってよく聴くようになったのは2011年8月頃のことだったらしい。last.fmに記録されていた。2011年の私は嵐とGRANRODEOとサンホラ、あとは鈴村健一さんの音楽をよく聞いていたみたい。入野自由くんとか、Kiramuneが元気に活動してるときなのかな。キャプチャのVALUE1700というのは英語の参考書についていたCD。カリガリとP-MODELはサブカルを理解したくて頑張って聴いてたけど全然馴染めなかった。
なんとなく思い出してきた。鈴村さんと真綾さんが2011年8月に結婚したのをきっかけに聴くようになったんだ。鈴村さんが真綾さんのことをとてもリスペクトしていて、歌詞も影響を受けているというのを知って聴き始めたような気がする。
それからもう10年も真綾さんのことが好きで、何回かライブも行った。真綾さん繋がりで知り合った友人もできた。
今回のライブは、2019/12/31-2020/01/01のカウントダウンライブ以来の参加でとても楽しみにしていた。感想、ちょっとだけ書く。
- CLEAR
ライブ、いつも自分が想像してた以上の大音量で行われるので耳が慣れてない最初のほうはいつも涙が勝手に出てきてしまう。嬉しさと感動と大音量に泣かされる。しかも今回は2曲目が『CLEAR』だったので思いがけず泣いてしまった。お家でずっと読んでいた坂元裕二の『Mother』に出てくる継美(親に虐待されていたところを学校の先生に誘拐される形で助けられ、先生を母として生きようとする子どもの話)のことを思い出して泣いてしまった。
夢って 愛って 本当はよく知らない
どんな色 どんな形 どこからやってくるの
愛も夢も自分の内からこみ上げてくる感情の名前すら知らず、それでも自由に飛び立とうとする景色がこの曲を聴くといつも浮かんでくる。『CLEAR』がクリアカード編の主題歌だったカードキャプターさくら、タロットカードに憧れていた私も大きくなったよねえという気持ちも相まって涙がドバドバ出た。
真綾さんが着ていたドレスがとっっってもすてきで、真綾さんはルンバみたいと言ってたけれど、なんというか淡いパープル色の二段のホールケーキ(結婚式でケーキ入刀するようなやつ)で、しかも髪の毛バッサリ切っちゃってるからより露出している肩や首のラインが美しく見えました。
- オールドファッション
2019年の私の大大大失恋ソング。表参道の喫茶店でそのとき大大大好きだったひとに別れたいと言われ、別れるのが嫌すぎて縋り付いて銀座の喫茶店で話し合いをしたことを思い出して泣く。表参道も銀座もおしゃれすぎて吐き気がしたわ。
この曲が終わるまで君を独り占めさせて
好きだったところだけずっと覚えていたいの
この曲が終わるまで君の恋人でいたい
楽しかった思い出に今は乾杯しようよ
破局する前後でちょうどリリースされたアルバムのうちの一曲で、本当に救われた。坂本真綾分かってんな〜〜〜!!こんなタイミングで失恋ソングなんて!メッチャ分かってる!ありがとう!まあ別れたあと12月でクリスマスも近いというのに死んだ目でマッチングアプリをやり続けていたし、あんまり救われてなかったかもしれないけど、私の2019年の失恋イメージソングとして繰り返し再生して爽やかに別れを受け入れることが少しずつできるようになって、その年のカウントダウンライブでも聴いて大号泣したけど今は別のひとと結婚してハッピーです!よかったですね、という感じ。
- あなたじゃなければ feat.堂島孝平
最近リリースされた『Duets』の一曲。堂島孝平さんの明るくて飄々とした感じが真綾さんの素顔を引き出していてすごく良かった。楽しかった。ライブに"参加"した感が強い一曲。それでいて音楽というよりも短い演劇を見ているような感じもした。『真綾さんが「お客さん一人残らず幸せにする」って言ってたけど、皆さんは幸せにしてもらうだけでいいんですかー!?皆さんが一番幸せにしたいのは誰ですかー!?」っていう堂島さんの声かけが、ファン心理をよく把握してる人間のそれで、コロナでせっかくのライブに声を出して応援できずもどかしい中、観客の心の中を代弁してくれるのはありがたかったな。『あなたじゃなければ』は、喧嘩してるカップルの曲で、真綾さんではなく堂島さんが作詞・作曲しているので、普段真綾さんが選ばないような言葉選びが新鮮で、こう、二人向き合って言い合う様子がありありと目に浮かぶ。今回ライブで二人の言い合いを見て、よりシーンが目に強く焼き付いて曲を聞くたびにあの日の横アリのことを思い出すだろうなと思う。いやもう全部よかった、パフォーマンスの全部が超最高だった。
相手にしてもらえてるだけラッキーだと思えよ
そっちが先に 謝ればいいだけ
その口に接着剤でも塗ってるの?
- ループ
無条件に涙が出てしまう曲。真綾さんが、MCの中で「25年間活動してきた中でずっと私と一緒にいたひとはいない、私の25年間は私しか知らない。共に音楽を作る仲間も、応援してくれるひとたちも。私の人生において、そういう支えてくれるひとたち 点のひとつひとつが私を見守ってくれてた」というようなことを言っていて、坂本真綾はずっとずっとこのテーマで歌ってるんだよなあと改めて感じた。真綾さんの『ループ』も、鈴村健一の『シンプルな未来』も、ずっと、人生において誰かと交差するその瞬間の集まりこそが奇跡であり愛であり普遍的なことである、みたいなことを言ってて、私の価値観の基礎にもなっていると思う。
- 誓い
もっと強くなりたい
もっと優しい人に
君が そうだったように
もっと、もっと
パートナーがいなくなったときのことを想像して泣いた曲。勝手に愛するひとを死んだことにして泣くなんてどれだけ自己憐憫?が過ぎればいいんだよ、不謹慎すぎるだろって感じだけれど、私はパートナーと20歳年の差があるので順当に行けば親の次に私のパートナーは死ぬ。そういうことを日々淡々と考えながら生きている。おそらく私はパートナーがいなくなっても踏み越えて生きていくだろうけど、この曲の歌詞にあるように、要所要所、ほんの些細なことでさえパートナーを思い出して胸がグッとなったり喉がギュッとなったり指がふるふる震えたりするのだろう。パートナーのように優しいひとになりたい、強いひとになりたいと思えば思うほど、そんなことは到底無理なような気がして余計に悲しくなる。
*
真綾さんが終盤の挨拶の中で、「今回ライブに行けなかった人たちは、ライブ行けなくて寂しい、悔しいって思わないでほしい」と将来映像化されて今回のライブを観た人に向けてメッセージを送っていた。もともとライブの映像化に前向きでなかった真綾さんが、今回は形に残すことを決めた。このご時世で参加を自粛したひと、行けなかったひと、17000人入る横浜アリーナで5000人しか客を入れず、それでもライブをやると決めた真綾さん。ライブに参加しなかったひとたちにも観てほしいなと思う、あの素敵な空間を味わってほしい。よいライブだった。
今回、音楽の片隅にパートナーのことを思い出すことが多かった。尊敬しているひとのこと、子どものころの将来の夢のことを思い出すことも多かった。これまでの人生を振り返るような、音楽を聴きながらも自分を見つめ直すような時間だった。
真綾さんの曲は水のようにすっと喉を通って身体に沁みる。だから好きだし、気がつけば聴いてしまう、聴くことに対して負担がないところが良い、疲れないから良い。心のお薬のようなお守りのようなもの。しばらくはライブの余韻に浸りながら私はどうにか生きていく。