仲良くしたかった

 

 

 

『問題のあるレストラン』をパートナーと観ている。2015年の作品。まだツイフェミとかまんさんとかいう言葉がインターネットにそこまで普及してない時代の作品。フェミニズムに関する問題がなかったわけじゃないけれど、多くのひとが目を向けなかった、見て見ないふりをする風潮だったから無かったことにされていた女の話、女の問題。今はフェミという言葉が変なふうに理解されておかしくなってるけど、存在を知られるより前と比べて少しは進歩なんですかね、分からないけどさ。

 

私が一番大事に思っているドラマ作品の『カルテット』の脚本家、坂元裕二さんがこの作品を書いている。坂元裕二、この作品書くの早すぎるよ〜〜〜

 

 

昨日、ツイッターに書いたことをまとめて消した。私の書いたことが全然知らないひとに全然筋違いの方向に理解されて普通に怖くなって消した。フォロワーがもっとたくさんいたら承認欲求が満たされていいだろうなと思っていたのに、ただの一匹に言及されただけですぐ逃げた、すぐ被害者ぶって死にたいとか言った。そもそも最近ツイッターに書きたいと思うこと、書かざるを得ない状況が減っていた。でも、どうしても書かざるを得ない気持ちが昨日の夜はあった。確かにあの夜精神がおかしくなっていたのかもしれないけど、でもそれでもあの言葉は私の一部だった。それでも怖くて消した、自分の気持ちを無いものにした。

 

うるせえ黙ってろ第三者、ていうか私が仲良いと勝手に距離を近く思ってた人間が、あっさりとツイッターリツイートを使う状況がまず怖くてビビっちゃった。そのひとの気持ちの一部を切り取って言及して誤った方向に理解されるのを助長して、あー怖かった。こんなのにいちいちビビってたら何にも言えなくなるって、でもメチャクチャ怖い、今更私インターネット向いてない?

 

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ジェンダー論、私が大学生に入って一番に受講した講義。「おれはお前がどうして大学に行きたいのかも知らない、おれは金づるなのか」と怒鳴られ、土下座をして通わせてもらった大学、父親ような、外で稼いでいることを理由に自分こそが権力者だと言わんばかりのその態度がおかしいと思うから、この思いが間違っていないことを確認するために私は大学に行く、法律を学ぶ、法律を知っていればいつか何かのときに有利に立てるかもしれない、それでジェンダーと法律を学んだ。『リボンの騎士』『少女革命ウテナ』『ベルサイユのばら』など、男装麗人について卒論を書くつもりでゼミで色々やっていたけど、卒論を書かなくても単位が足りたのでそのまま書かずに卒業した。

 

 

お母さん食堂の件が炎上したとき、パートナーと話していたら「じゃあお父さん食堂でいいよ」と突然大きい声を出されてから、フェミニズムに関する話題を避けている。雑な理解だ、何にも分かってない、かと言って説得したり説明するコストを払うのはサボりたい、勝手にアップデートしてほしいのが本当のところ。「教育して叱ってくれ」なんてそんなのすごく恵まれた状況。年始の逃げ恥のスペシャルを見せたら絶対にムリだと思ってひとりのときに見た。ひとつひとつ、避けて通っている。

 

 

『問題のあるレストラン』、男性に対して主人公の真木よう子さん演じるたま子が「私は、あなたと、仲良くしたかったんです。一緒にいい仕事がしたかったんですよ」と言うシーンでありえないほど泣いた。女のこと軽んじて 憎みながら 性的消費をして 少しでも盾突いたら「女って怖い」と壁を作って。

 

私や他の女性社員のことを、まるで言うことの聞かない自分の持ち物のようにして、憎んでいました。

 

あれが嫌だ、これが嫌だ

セクハラだ、パワハラだ。
傷ついた、傷ついた。
えっ? 何なんだよ? この傷つきました世代は。ここにはね、真面目に一生懸命働く善良なスタッフしかいないんだよ。これ以上被害者気取りで、言いがかりつけるんだ

 

女にだって意思はあるのに、それを無かったかのように色んな手段で無効化して、壁作ってるくせにハラスメントして、たま子が「こっち(女性側)の誤解じゃなくて、そっち(男性側)の誤解なんです」と、私たちだけの問題じゃなくてあなたたちの問題でもあるんだと言ってのける様にわんわん泣いた。おまえらも考えろ、おまえらが考えろ。なんでそんなに他人事でいられるんだよ。

「私は、あなたと、仲良くしたかったんです。一緒にいい仕事がしたかったんですよ」って、そういう世の中になっていけばいいと思った。理想的すぎますか?そっち側の生きづらさもこっち側のしんどさも全てひっくるめて、前よりはマシ程度になってくれたらいいのにな。

 

女友達に、「ちゃんとフェミニズムとかジェンダーについて考えているよなかちゃんはすごくカッコいいよ」と言われることにいつも違和感を感じていた。おまえの問題でもあるのに、なんでそんなに他人事みたいな態度なの、って。男性に理解されないより、同性の人間に言われることが何よりキツかった。助けてよ、って他人に縋ろうとしてしまう甘え、甘えだから仕方ない、諦めよって。色々言いたいことがあるのに言えなくて 何だよお前その態度おかしいだろって思ってるのに仲良くしてて だからつらいんだと思う。でも、彼女なりの生き方があって、私みたいにいちいち怒らずに済んでるんだからそっちのほうがいいよねとも思う。他人が波にのまれて溺れる様子を目撃してるのに、タピオカかスタバ啜りながら自分の前髪気にしてる感じに近い。何?

 

え?なんで皆さん水着着ないんですか?私いっつも心に水着着てますよ。おしりとか触られても全然何も言わないですよ。おしり触られても何にも感じない教習所卒業したんで。その服男受け悪いよ、とかいわれても、ああ~すいません気をつけます、って返せる教習所卒業したんで。

痩せろーとかヤラせろーとか言われても笑って誤魔化せる教習所も出ました。免許証お財布にパンパンです。

痴漢されたらスカートを履いてる方が悪いんです。好きじゃない男の人に誘われて断るのは偉そうな勘違い女なのでダメです。セクハラされたら先方は温もりが欲しかっただけなので許しましょう。悪気はないのでこっちはスルーして受け入れるのが正解です。

どうしてしずかちゃんはいつもだめな男と偉そうな金持ちの男と暴力ふるう男とばかり仲良くしているか分かりますか?どうしていつもお風呂場覗かれてもすぐに機嫌直すか分かりますか?どうして女友達がいないか分かりますか?彼女も免許証、いっぱい持ってるんだと思います。

 

目を逸らしていること、見て見ぬふりしていること、無かったことにしないでって思う。『カルテット』のサンキューパセリの話。

 

食べてもたべなくてもいいの。ここにパセリがいることを忘れちゃわないで

 

自分の感情も、他人の感情も、無かったことにしないで、忘れちゃわないで、元気がないなら少し忘れても目を逸らしてもいいけど、最終的にすっかり忘れて思い出さないときもあるかもしれないけど、でも、って思っちゃう。

 

私がドラマを観てわんわん泣く隣でパートナーはよしよし撫でてくれティッシュを渡してくれる。同じ作品を見ているけど、きっと思ってることは全然違う。ウゼ〜って思ってるのかもしれないし違うかもしれない。まあ途中でやめようとか言わずに付き合ってくれることを嬉しく思ってるよという感じ。彼と『花束みたいな恋をした』を一緒に観てから、いつ恋も観たし、坂元裕二祭りが開催されています、我が家。